EDGEof 小田嶋 Alex. 太輔が見る「日本のスタートアップ、世界との戦い方」

2018.11.22

電通と多彩なメンター陣による、キーワードに“クリエイティブとブランディング”を掲げたスタートアップ支援プログラム「GRASSHOPPER」。現在、メンタリングを行う企業を選定中だ。

一方、当サイトでは思想面で我々と近いイノベーターへ取材し、記事を公開していく。今回は、2018年4月に東京・渋谷に生まれたゲームチェンジャースタジオ・EDGEofを主宰しCo-CEOを務める小田嶋 Alex. 太輔。世界のスタートアップ動向を知る小田嶋の考えた、日本のスタートアップが“世界で生きる道”とは。

世界で勝てる分野は “どニッチ”なプロダクト

–世界のスタートアップ状況に照らし、日本のスタートアップに必要な「クリエイティビティ」を教えてください。

小田嶋:日本はとがったことが許容されない文化もある ので、リスクマネーの少ない、無難なスタートアップが多いと感じています。私もメンバーで、フランス政府がチカラをいれるスタートアップ支援プログラム「フレンチテック」系のハードウェアスタートアップは、とてもエッジが効いています。特に「Hardware Club」から出てくるスタートアップは象徴的ですね。例えばスター・ウォーズのR2-D2的なプロジェクターロボット「Keeker」とか。また、フレンチテックでいうとテルミンのように指で操作する 音楽再生デバイス「Neova」とか。デザインはかっこいいし用途も絞っていて、モノとしても視点の面でも、とてもシャープなんですよね。

例えば、今挙げた音楽再生デバイスなら、キーボードやマウスを使わない映像編集コントローラーとしても使えるのではないか?と提案してみても「いや、俺たちは音楽を再生したいんだ」と不要な機能は入れない。ぶっ飛んだニッチを目指すスタートアップと、それを支援するコミュニティ、政府という体制がフランスでは出来上がってきています。

サンフランシスコやシリコンバレーは元祖「GRASSHOPPER」、つまりぶっ飛んでいる人とそれを支援するコミュニティが強いですよね、ジェットエンジンを積んだドローンで飛ぼうとするオジサンがいたり。スタートアップもぶっ飛んでいるし、メイカーズ文化もありますし。ただフランスは「デザイン」を重視しながら進めているのがサンフランシスコや他の都市から出てくるスタートアップとの違いなのかなと思っています。

海外スタートアップと比較すると、日本のスタートアップはとても勤勉です。僕なんかが下手にアドバイスできないぐらい知識量もありますし。真面目でコツコツと積み上げていくものが多いですね。ぶっ飛んだプロダクトを作っているところが少ないという印象があります。

–日本のスタートアップの状況は今後も変わらないのでしょうか?

小田嶋:今まではウェブ系ばかり見ていたと思うのですが、来年からは変わってきて、日本の強みを押し出すIoTハードウェアプロダクトが出てくるのではないかと予想しています。日本は複雑化する大規模ソフトウェアではアメリカに勝てないと思っています。そうすると勝つ分野としては、どニッチなプロダクト。例えばバーチャルホームロボットのGateboxや、COCOA MOTORSの“持ち運べる車”WALKCARなどですね。

ニッチ過ぎる、現在の法律では製品化できない、そういう大手企業が自身ではできないものをオープンイノベーションの文脈で支援していき、スタートアップが実現するという構図が増えてくるのではないかと思っています。

また、日本には優秀な技術を有する町工場がたくさんありますからね。深圳は私見ですが、安くて早いものの言われた通りのことしかやらないですし。プロトタイピングについても精度が低いので、日本の町工場への期待が更に高まるのではないか。町工場の尖った技術を持っている人たちがスタートアップのぶっ飛んだアイデアと結ばれると、ユニークなプロダクトにつながる。来年あたりから面白いものが出てきそうです。

「Japan is No.1」じゃなくていいんです。「Japan is only one」を目指すのが、これからの日本のあるべき姿ではないかと感じます。

–「Japan is only one」を目指すために、日本にいる我々にはどのようなマインドが必要でしょうか?

小田嶋:個性的ではみ出している人を受け入れるマインドが大事ですね。「みんなで汗かいて、苦労しているんだからお前も頑張れ」みたいな同調圧力はNGです。ぶっ飛んで成功する人を応援し、それを目指す状況を作らないと本当に日本はヤバイと思います。

中国やインドは海外で仕事しても自国に戻ってきますが、日本の優秀な人は一回海外に行ったらもう戻ってきません。そのような状況を改善する努力をしなくてはなりません。

型にはめる、出る杭は潰すというような、工業製品を作るように人を矯正する文化は本当に危険です。その人の本来もっているポテンシャルを潰さないと出世できないような仕組みを廃止し、個性を伸ばし、例外を自分から作っていくことを個人でも組織でもコミュニティでもやっていかないと、この国は終わってしまうのではないかと危惧しています。

日本は今、損をしている

–今のお話には、本当に危機感を感じます。この状況で日本のスタートアップを大きくジャンプさせる、私たちの言い方ならばGRASSHOPPERとして飛び立たせるため、EDGEofとしては何を心がけていますか?

小田嶋:日本の「出島」になることです。かつての出島はオランダのみとの交流れでしたが、我々はアメリカ、フランス、マレーシア、オーストリア、スウェーデンなど北欧、イギリス、バーレーン、コロンビアをはじめとする国々と日本のスタートアップの懸け橋を作り始めています。

日本は今、損をしているんです。GDPは世界第3位なのに、面倒くさい国だと思われて、マーケットとしては世界のスタートアップからスキップされています。スタートアップが目指す国として、GDP第1位のアメリカは周知の通りですが、GDP第2位の中国に対して、ウェブ系スタートアップは「コピーキャットを作られては」と進出を恐れています。それでは第3位の日本を目指すかというと、そうではないんです。

東南アジアを目指すスタートアップが増えています。なぜならば東南アジアにはシンガポールという拠点もあり、加えて英語が通用します。One Platform & One languageでエリア全域に普及するため、スタートアップにとっては魅力的な地域なのです。さらに、その次はどこかというと、外国企業誘致を積極的に行っている韓国を目指すんですよね。

–英語の壁を感じる状況ですね…。

小田嶋:英語のスコアが低い人は入学を拒否する大学が出てきたというニュースを最近目にしましたが、正しいと思います。英語はかつてのラテン語のように全ての共通語になってきています。受験勉強の英語ではなく、英語しか話せない環境に積極的に入り、慣れていく必要があります。

海外のカンファレンス、例えばCESで通訳を連れていくのは日本だけです。通訳を連れていくということは、交渉したい本人が「しゃべる気ないんです」と言っているようなもので、交渉相手からはスキップされてしまいます。

ビルは不動産価値を生むものであるという固定観念を超えたEDGEof

–他国の状況、スタートアップの動向からこれからの日本に危機を感じながらも、まずは殻を破り英語のコミュニケーションを積極的に受け入れていくべきだと、小田嶋さんのお話で強く実感しました。ここからは小田嶋さん個人にフォーカスしていきます。現在、社会における「自分の価値」をどのように考えていますか?

小田嶋:「マルチ・カルチュアル」であるということでしょうか? 私自身が日本とフランスのハーフで家の中が国際的ということもありますし、通っていた東京のフランス系インターナショナルスクールは当時都内で一番安かったのもあり、30カ国の生徒が通っていました。給食も豚肉が入ってないメニューがあったり、ラマダン中は体育のあとに水が飲めない友達がいたりしました。

日本の「当たり前」は共通項を強いる際に使われがちですが、「当たり前」は人それぞれ、一人一人で違うという前提に立つ必要があります。

良いか悪いかではなく「多様性が当たり前」の私なので、これから多様性をより受け入れなくてはならない日本で、様々なシーンの「通訳者」として自分の価値が発揮できると考えています。

–固定観念に囚われず突破した事例、面白いエピソードを教えてください。

小田嶋:固定観念に囚われたことは今までないです。2018年4月にスタートしたEDGFofはコミュニティを育てるためのものですが、ウェブでもできることをあえて物理的空間を作り挑戦しています。これも固定観念から飛び出している事例かもしれません。

一棟丸々コミュニティのために作り、そして地下には茶室もあるしルーフトップもある。ここまで開き直ってやったことで凄い方々が集まり、その方々がさらに凄い方々をどんどん紹介してくれています。

ビルは不動産価値を生むものであるという固定観念を超えて、賃料は徴収せずにスピード感を持ってコミュニティを育てていますし、代表6名もそれぞれが世界各国とビジネス、文化、エンタメ分野に強いつながりを持っているので大使館を絡めて世界規模でのコミュニティになっています。

面白いのが代表6名があえて足並みを揃えていないんです。なので、その分思いがけないビッグインパクトが生み出せるという効果も起きています。

野望を持ちつつも戦術を司れる人でいたい

–「失敗」の定義について。小田嶋さんはどの程度の失敗まで許せますか?

小田嶋:新しい失敗であれば良いと思っています。それはチャレンジしたということですから。例えばEDGEofのスタッフが新しい失敗をすることは応援します。ただし、同じ失敗を繰り返すのは良くないです。また、人の気持ちを考えないような失敗は許しません。誰かの行為をないがしろにするような失敗はNGです。

–ビジネスモデル/企画を作る時にはどのように作り始めますか?

小田嶋:僕が小学校の時に憧れたのが三国志の諸葛亮孔明です。軍師に憧れていて、野望を持ちつつも戦術を司れるような人でいたいと思っていました。なので、ビジネスモデルや企画ありきというよりは、野望を持っている人に対して、どうやったら実現できるのか?と戦術を考えていくのが得意です。

あとは、ゴールから逆算するアプローチを取ります。学生時代からコンサルタントである父親の仕事を手伝っていたのですが、その際に父が「ドラえもんがいる前提でアイデアを考えろ」と教えてくれたことを守っています。

役に立つかどうかよりも、それが面白いかどうかから発想を飛ばす。その後の着地方法はあとから戦術を考えていくというものです。

–最後に、小田嶋さんの今後の野望を教えてください。

小田嶋:全世界のイノベーションに関わる全てのものが必ず通るゲートウェイになりたいと考えています。

text:西村真里子
edit:市來孝人