mui創業メンバーが語る「人にとって心地よいIoTの環境を作る 」こと

2018.12.05

電通と多彩なメンター陣による、スタートアップ支援プログラム「GRASSHOPPER」。キーワードに“クリエイティブとブランディング”を掲げ、現在、メンタリングを行う企業を選定中だ。

一方、当サイトではクリエイティブのチカラを実践しているイノベーターへ取材し、記事を公開していく。今回は、mui の創業メンバー、代表の大木和典、共同創業者でクリエーティブディレクターの廣部延安、ハードウェアアーキテクトの山本貴則に話を聞いた。

muiは木製の直方体の70センチ弱の長さのシンプルなIoTデバイスで、触れることで家電を操作したり様々な情報がディスプレイと音声でやりとり出来るというプロダクトだが、このチームは、その先にあるIoT時代のUI/UXのプラットフォーマーとしての道まで見据えた事業を構想していた(muiは、NISSHAの社内プロジェクトで、現在、資本金2000万円の子会社である)。また、Kickstarterもすでに約1,130万の目標額を突破、12/8(土)まで実施している。

(左から)廣部延安、大木和典、山本貴則

「無為」という言葉をプロダクト名に

–まずは開発したきっかけや背景を教えてください。

廣部 触るインターフェイスは多数ありますが、起点を木にすると面白いのではと思ったのが始まりです。さらにクラウドに貯まったデータで、人の好みに合わせた環境を作り出せていく。自然の流れに身を任せ行動するという「無為」という言葉をプロダクト名にしました。テクノロジーに人が使われるのではなく、本来の人間がより豊かで自然な生活をするのがいいんじゃないかなと。そのコンセプトを、1本の木の棒を作って、まずは世の中に提案してみたというわけです。

大木 私はNISSHAのアメリカの現地法人に2012年から2018年までいたのですが、NYの家具の展示会で、タイルを壁一面に貼り付けてその一部がインターフェイスに変わるというアイディアのプロトタイプを出品しましたところ、ツイッターやインスタにあがったり、メディアに取り上げられたりしてかなり反響がありました。 Architect Newspaperというメディアの2015年のbest of productに選ばれたことを機に、その頃NYにやってきた廣部と打ち合わせしてアイデアを練り、muiへと進化させました。

廣部 普通の環境の中にテクノロジーが自然に入ってくることが未来的だと思っています。

大木 muiは100万台売るようなことは考えていません。この技術を特許化していますので、ハードを作っている方にUI/UXとして使っていただくことを考えています。

–特許の内容と今後の展開について教えてください。

大木 木、石、革、ファイバーといった素材と、その下にタッチパネル、さらにその下に光源という三層構造上の、ディスプレーと操作表示パネルの仕様を、国際出願をし、日本でも取得できています。同時にデザインシステム上で動くソフトウェアも特許化しています。OSの開発にも力を入れており、Android上でUI/UXが稼働するシステムを特許ライセンスとともに提供していきたいと考えています。IoTのUI/UXは、これからの分野です。muiを通じて、素材のインターフェイスというものがあることを認知してもらってから、今後、様々なプロダクトがネットに繋がっていく時のUI/UXを、システムを作って提供し確立していきたいと考えています。

IoTは、人と関わって行く部分にバリューを生みます。2020年には1兆個のセンサー、400億個のIoTプロダクトが生まれてくると言われていますが、ディスプレイがどんどん増えて行くのは人間の情報環境にとって、良いはずがありません。本来、人間は、自然に対してインタラクションするように出来ていて、テクノロジーや情報、機械に関しては違和感を感じる度合いが高いのです。そこで、その界面に自然素材を持ってくることで、情報の硬さを和らげながら、人と機械の関係を変えると、人の知覚が変わり、家庭の空間が心地よいものになります。そしてOSに担保されたUI/UXを貯めていきながら、可視化することで、価値を提供し独自性を打ち出していきたいと考えています。

我々はデザインをIP化して様々な素材でおさえているだけでなく、ソフトウェア自体もIP化しており、誰でも使えるモジュールを提供する、つまりプラットフォームのような考え方にしていて、ハードに開くだけでなくソフトレイヤーに開くことも考えています。概念的にはCalm Technologyという、元はゼロックスのPARC(PaloAlto Research Center)が出したコンセプトで、MITメディアラボのアンバー・ケースが進化させて本(Calm Technology: Principles and Patterns for Non-Intrusive Design)にもなっており、静かなテクノロジー体験、というものが近いと思いますが、我々はこれを1つの実像として示したと言えると思っています。

アメリカの高校生から、スピーチ大会の題材として使いたいと連絡も

–空間作りについても手がけられましたか?

廣部 すでにオフィスのトライもしていて、大木のボストン時代の建築家からの紹介で、4月にスタートアップのオフィスをmuiでプロデュースしました。

–その他想定される企業のユースケースを教えてください。

廣部 例えばエネルギー会社。エネルギーを各家庭で作る時代になったら、その可視化が必要ですよね。今はメーターがキッチンの奥とか納戸の中みたいな暗いところみたいなところにあることが多いですが、リビングの中央にあって、家族が「あ電気が出てるね」とコミュニケーションをしたりすると豊かな体験になります。その情報も、グラフとかではなく、シンプルで心地よく子供でも理解できるものだったりするものだとなお心地よいと思います。自動車会社からも問い合わせがありました。プロダクトを出したことで、この種の問題やニーズが可視化されて反応する方々が出てきたということだと捉えています。

–一般のユーザーからの反応はどうですか?

大木 あるアメリカ人から、ZEN GARDENだと言われました。引き算でエレメントを絞り込んで表現するということでしょうね。Kickstarterを見たアメリカの高校生から、スピーチ大会の題材として使いたいと連絡もありまして、先生と5人くらいの高校生とテレカンをしました。Kickstarterでは情報体験を変えようというメッセージを打ち出していたのですが、15,6歳の彼らは、はっきり理解してくれていて感動しました。

また、先週イベントに元MITメディアラボの友達が来てくれて、「muiやユカイ工学のBoccoなどは、人が触った時間そのものが残ることが印象的だ。たとえプロダクトが壊れても、muiは家具になるし、Boccoは人形になる。それがガジェットとの大きな違いなんだ」と言われました。

廣部 身近なユースケースとしては、断捨離みたいなことに使えそうです。muiが入ることによって家をシンプルに片付けていけなきゃなという欲求が強くなっていくんじゃないかと思います。うちの家でもどんどん捨てたいと言われ始め…(笑)

大木 うちの奥さんももうこれ以上何かやるのは嫌だという時に、muiを触ったりしています。ユースケースの深堀りがまだまだ必要ですね(笑)。

–muiを今後どういう存在にしていきたいですか?
 
大木 企業の中で、眠っている技術やコンテンツを、プロデュースして大きくしていくという事例になればいいですね。muiは、先日、CES2019のイノベーション賞も受賞しましたが、これが京都のような地方都市、さらにサラリーマンが始めたプロジェクトだったという現象がもっと一般化していくといいと思います。そのうちにやるなら日本を出ようよ、みたいなことを成功したら言いたいですね(笑)。

text:月村寛之
edit:市來孝人