若きベンチャーキャピタリスト THE SEED廣澤太紀の「投資を決めるポイント」

2019.01.25

電通と多彩なメンター陣による、スタートアップ支援プログラム「GRASSHOPPER」。クリエイティブのチカラを実践しているイノベーターへの取材も実施し、スタートアップとクリエイティブの関係性について探っていく。今回は、「起業家に伴走する」ことをテーマに、創業初期の起業家へ投資するベンチャーキャピタル「THE SEED」の代表である廣澤太紀。26歳の若さで最大10億円のファンドを設立し、若い起業家たちと共に歩み続ける廣澤に、シード企業の支援に対する思いやベンチャーキャピタリストとしてのあり方を取材した。

領域ではなく、「人に投資する」

–まず、THE SEEDと廣澤さんの仕事について教えてください。

THE SEEDは名前の通り、創業期の会社への投資、シード投資をしているベンチャーキャピタルです。投資しているのはまだ日の目を浴びていない若くて優秀な起業家です。

また、スタートアップのコミュニティと繋がりが薄い起業家に対して、資金やノウハウを提供してくださる先輩起業家や投資家、企業との接点をつくる活動をしています。

–THE SEEDを立ち上げた背景は何ですか?

どうしてもシードVCになりたいという強い思いが積み上がって、それまで働いていたVCから独立しようと決心しました。また、前職のときに同年代の起業家から評価してもらっていたのが、「若い起業家にスタートアップコミュニティとの接点を作っていく、入口を作っていく」という活動でした。

一方で、上場企業の経営陣の方々からも、「次世代の若き起業家へ投資したいが、才能ある人を探す時間がない」といった話を受けていました。

そういった、自分のやりたいこと、若い起業家、ファンド出資者のニーズが繋がった結果です。

–廣澤さんが投資先を決める際のポイントはありますか。

基本的には領域ではなく、「人に投資する」という意識を持っています。尊敬する投資家に、SV Angel創設者のRon Conwayという方がいます。彼のインタビュー記事に感動して、僕自身のコンセプトも「ゆりかごから墓場まで」です。

ですから、投資を決める時は、その全てに一緒に乗りたいと思える相手に投資するという信念を大事にしています。事業や成し遂げたい課題解決に集中している人、かつ、まだ評価につながっていない人にポテンシャルを感じ、投資することが多いです。

–元々ご自身で起業しようとは思わなかったのでしょうか?

僕の場合、とにかく起業家の成長を近くで見ているのが好きなんです。まだ知らない才能を見つけ支援する、そのことだけに集中し続けることを職業とするのは難しいと思っていたのですが、ベンチャーキャピタルという仕事を知って、VCになりたいと思いました。創業期の課題多きシード企業を支援する、今の仕事が大好きです。

–GRASSHOPPERのコンセプトでもある、スタートアップにおけるクリエイティブの重要性に関して、廣澤さんの考えを聞かせてください。

すごく大事だと思います。これまで重視されてきたロジカルシンキングは、頭のいい人たちが正解を追い求めていく分、差別化が難しい面もあります。クリエイティブこそ違いを作る武器になると考えてます。本質的に何を届けるのかということを突き詰めた、高いクリエイティビティのあるアウトプットは非常に重要だと感じています。

一方で、創業期の起業家の場合は、日々忙殺され、そういったものを後回しせざるを得ない現実があります。

将来大丈夫か、この事業でいいのか、資金は尽きないか、人がやめないか――など、常に漠然とした不安を抱えながら大量のタスクと向き合う起業家にとって、クリエイティブの構築はハードルが高く、そこまで手が回せないケースがほとんどです。だからこそ、GRASSHOPPER含め、スタートアップに対して外部からクリエイティブ面を支援する環境づくりは非常に重要だと考えます。

細い失敗やうまくいかないことは気にせず、突き進め

–廣澤さん個人として、社会における自分の価値は何だと考えますか。

成功した経営者たちから、日の目を浴びていない若い起業家へ、新しいお金の流れが生まれることが価値だと思います。

これがどのくらいの価値になるかは5年10年経たないとわからないですが、THE SEEDがあったことで生まれた起業家たちがこの先どれだけ名を残していくか、その時に自分のファンドとその起業家との間にどれだけの信頼関係が築かれているのか、それが自分の価値になると考えています。

–廣澤さんの失敗の定義、捉え方を教えてください。

事前の準備不足で思った結果が出せないことは失敗だなと思います。

僕自身はかなり臆病な性格なので、どんな課題は誰に相談するかを決めて、出来る限り準備したいです。例えば人生の選択で迷ったらこの友達に、VCの仕事だったらこの先輩にという感じです。そういう課題の切り分けと、定期的に相談させてもらえる関係性は大事にしています。

失敗に対する捉え方として、投資先と話しているのは、「立ち上がれないような致命的な失敗や、誰が考えても分かる失敗をしない」ということだけです。あとは細い失敗やうまくいかないことは気にせずに、起業家が向かいたい未来に対して突き進んでほしい、そう伝えています。

Interview & Text:長島龍大
Edit:市來孝人