「政治と市民をポップに繋ぎたい」20歳の学生起業家「PoliPoli」伊藤和真が新デザイン/機能にかけた想い

2019.01.25

2019年、地方統一選挙や参議院選挙など数多くの政治イベントを目前に控え、PoliTechスタートアップ・PoliPoliの躍進が止まらない。 1月には、約6000万円の資金調達を達成。また、この政治イヤーに向けて、コミュニティの活性化・拡大を目指し、ロゴやUIのデザインリニューアルや新機能の追加を発表。「テクノロジーで国家システムを再構築したい」と語るのは、PoliPoli代表・伊藤和真だ。20歳にして、様々な挑戦で日本の政治シーンを驚かし続ける伊藤氏は、日本政治の先にどんな未来を描いているのだろうか。

ベンチャー畑で育つ中、見つけた「政治」というブルーオーシャン

ーまず、伊藤さんが起業の分野に「政治」を選んだ背景を教えてください。

伊藤:よくある政治のキャンペーンをやっている団体は、その世界の中にいる政治が好きな人が多いじゃないですか。一方僕は、アプリ制作やVCをやったりと長い間ベンチャーの世界に身を置いていて、その世界の先輩たちがかっこいいと思って生きてきました。それぞれが閉じていて、交わらない世界にいたんです。なので、当時政治に関心があったわけではなく、選挙があると「投票行こうかな」と頭のどこかで思っているくらいでした。

ただある時、ベンチャーという外の視点から、ふと政治の世界を見たときにイケてるサービスがなく「ないなら作っちゃおう」と思ったのがスタートです。今の日本で、政治業界でビジネスを成立させているのは、一部の広告代理店と政策シンクタンクくらいで、インターネットビジネスという視点だとまったく参入のない状況です。一方、政治業界自体は日々莫大なお金が動いている市場です。市場は大きいのに、イケてるインターネットサービスもない。その上、そもそもの課題が大きいので、共感性を持ったサービス展開ができそうだなと直感的に思いました。

ー「このアイデアはいける!」と確信したきっかけはありましたか?

伊藤:2017年の末ごろ「こんなサービスがあったら便利そうだな」と思い立って、4日くらいで自作したアプリを千葉県市川市の選挙で試してみたことがきっかけでした。そのアプリでは、政治家の情報を公開したり、政治家に質問すると答えが返ってくる機能などを搭載したのですが、ユーザーも広がり、メディアにもかなり取り上げられたんですよね。その時の周囲の反応を見て心を決めたら、数カ月のうちに、いつのまにか起業していました(笑)。

ーto G(政治)サービスは、日本国内だと少ないですよね。海外の状況を教えてください。

伊藤:海外ではPoliTech(ポリテック)と呼ばれて勢力が拡大しています。エストニアでは行政が取り組んでいたり、アメリカではFacebookの初期投資家のショーン・パーカーが手がけるBrigadeが900万ドルほど調達していたりします。
(出典:https://www.crunchbase.com/organization/brigade#section-overview

違う視点で言うと、PoliPoliを作る上で参考にしたもので、スタンフォード大学とメイナー市という街が社会実験を行った地域通貨「イノバック」というものがあります。この通貨に換金性はないのですが、たとえば身の回りの社会課題について政策提案をすればするほど通貨がもらえて、一定まで貯めると「一日名誉市長」になれるインセンティブがあるんです。ゲーム感覚で政治に参加ができて面白いなと思っていました。

ミッションは「政治と市民の距離をポップに近づける」

ー「政治家と、まちづくり」をスローガンに掲げるPoliPoliですが、それを実現する工夫や仕組みを伺いたいです。

伊藤:サービスのローンチ以降、ダウンロード数は約1万にまで達し、政治家も有名な方が多く利用してくださったのですが、もっと強くPoliPoliとしての意思をはっきり提示していく必要を感じていました。その意思表示として、今回ロゴとアプリデザインを大幅にリニューアルして、かなりポップに振り切ったデザインにしました。

というのも、やっぱり現代人は政治に興味がないんですよ。そんな彼らの生活スタイルといえば、寝ている時間以外はほとんどオンラインに繋がっていて、起きたらすぐにSNSを確認したり、ゲームにものすごい時間を費やしているものですよね。そんな現代人の心を動かし政治に参加してもらうためにも、「ゲーム感覚」や「ポップなデザイン性」というのは非常に重要だと思っています。

「PoliPoli」というネーミングも、ポップで覚えやすく、若い人たちの反応もいいので気に入っています。

ーロゴもかなり変わっていますよね。このクリエイティブに込めたこだわりも教えてください。

伊藤: この丸が、よく見ると歪んだ丸になっていて、世の中には人の数だけ意見の多様性があること、つまり政治の形を体現しています。アプリ内でのユーザーのアイコンもこのいびつな丸になっていたり、こだわりがあります。

ーリニューアルに伴い、追加された新機能はありますか?

伊藤:自分の身の回りで困ったことを投稿して、そのオンライン上の部屋に政治家を呼べる「プロジェクト機能」を追加しました。 これまでは、市民同士が全国的に雑談をするトークルームが多かったのですが、PoliPoliの一番のバリューは、そこに政治家がいて繋がることで、身の回りが変わることです。なので、イシュー解決のためのプロジェクト部屋を個人が作成でき、そのイシューへの共感値が一定まで集まると、その部屋に政治家を呼べるようにしました。個人主導で世の中が変わっていく様子が、アプリ上で体感できるようになると思います。

(左)政治家を含む全ユーザーが発言などから点数がつけられる「スコアリング機能」。ゲーム感覚で楽しみながら、建設的な議論ができる。(中央・右)新たに追加された「プロジェクト機能」。

ー今後、PoliPoliとして描いていきたい日本の社会像はありますか?

伊藤:たくさんありますが、まずは「政治と市民の距離が近い社会」を実現したいです。今は自分の声を政治に反映する場は選挙だけで、政治・行政と人々の距離が非常に遠い状況です。一方、情報や社会の仕組みが複雑になるにつれ、最近だと民泊に関する問題などは、迅速な対応が必要とされています。

政治家・行政・人々というのは、政治家は行政に働きかけられるし、行政は人々へ公共サービスを届け、人々はその政治家を選べるという、相互に影響を及ぼしあう「じゃんけん」の関係になっています。リーダーシップが求められる風土のアメリカは、政治家個人にお金が集まり、個人でも弁護士などのプロを雇うこともでき、議員立法の数が多いんです。それに対して、世界的に見ても優秀な官僚が存在する日本では、3つのじゃんけんのうちの行政が強くなっていました。

これを否定したいわけではなく、インターネットの出現により情報が指数関数的に増えている現在においては、これまでのように行政や定期的に選ぶ政治家だけでは民意を反映することができなくなりつつあり、人々は政治に無力さを感じ、政治と行政と人々の隔たりが生まれています。そんな現状を打破するソリューションとして、政治と行政と市民をポップにつなぐ仕組みを作ることで、ネット上で世の中の声がどんどん吸い上げられ、楽しく政治参加できる社会を作っていきたいです。

起業には「座学の10倍」の学びの価値がある

ー国内ではいまだto Gサービスが少ない中で、PoliPoliを立ち上げたというのは大きな挑戦だと思います。様々なチャレンジをする中で、伊藤さんは「成功」や「失敗」についてどう捉えていますか?

伊藤:今の時代の起業は、昔のように土地を担保にするといったリスクを背負うものではなく、例えるなら未来を担保にしているものだと考えています。その点で、まだ学生なので失敗へのリスクを強く感じることはあまりないです。あえていうなら、「時間を無駄にすること」が自分の中でのリスクかもしれません。ただ、自分で起業するとなると、座学の10倍の価値がある時間になると思っているので、仮に会社が倒産してしまったとしても、勉強という意味では非常に意味のある時間になると思っています。

ー10代にしてPoliPoliとして初の起業を経験。そんな伊藤さんの立場があるのはどなたの影響が大きいですか?

伊藤:起業に関して寛容だった親にはとても感謝しています。また、僕のようなまだ何もない若者に投資してくれる投資家の方々には非常に感謝しています。

ーそんな投資家の方々に振り向いてもらうために必要なことは、なんだと思いますか?

伊藤:自信を持って未来を語ることでしょうか。以前、聞いた言葉で「英語のビジョンを日本語でハッタリと言う」というフレーズがあったのですが、ビジョンとは今現在は存在しないものを語ることなので、ハッタリ力は大事だと思います。自分の想いを、クリアかつ論理的に、みんなに伝わるように、「これが本当にいい世の中にする」という夢を、自信を持って語るようにしています。

ー大学入学直後には俳句アプリ「てふてふ」を作ったほか、VCや起業などすでに多くの経験をしている伊藤さんですが、現代社会における「自分の価値」をどのように考えていますか?

伊藤:インターネットの出現によって、個人をエンパワーメントする時代になったことはすごく大きな変化だと思っています。これまでは、マスメディアに認められない限り世の中に出てこられなかったものも、ユーチューバーやラッパーしかり、個人が簡単にしかもほぼお金をかけずにコンテンツを作り流通させて、世界的なバズを起こしてお金まで稼げる世の中になりました。その流れで、学生や若い人の起業も当然になっていて、その結果、世の中全体がインターネットビジネスの恩恵を受けているという仕組みになっています。僕もその流れの中にいると思っているので、その潮流に乗って世の中にきちんと自分なりの価値提供をしていきたいですね。

ー伊藤さんの、今後の野望を教えてください。

伊藤:政治・行政・市民の距離を近づけることで、「新しい国」を作りたいです。政治や行政のコミュニティの外にいる人間だからこそ、世の中に近い場所で今のニーズを吸い上げながら、PoliPoliというインターネットビジネスを使って、国家システムをアップデートしていきます。

Interview & Text:長谷川きなみ
Edit:市來孝人