サービス開発を通して「誰でもアーティストやクリエイターになれる世界」を目指す–「CHIP」小澤昂大

2019.01.10

電通と多彩なメンター陣による、スタートアップ支援プログラム「GRASSHOPPER」。クリエイティブのチカラを実践しているイノベーターへの取材も実施し、スタートアップとクリエイティブの関係性について探っていく。

今回は、「才能あるアーティストやクリエイターを支えるプラットフォームを作りたい」という思いから、ファンクラブ生成サービス「CHIP」を立ち上げた、RINACITA代表取締役の小澤昂大。個人がスマホから気軽に情報発信し、フォロワーを集める時代のファンクラブのあり方や、アーティストとファンを繋ぐプラットフォームにおける、クリエイティブやブランディングの必要性について聞いた。

夢を諦めていく人を減らしたい—そんな思いが強くあった

–まず、CHIPがどのようなサービスか簡単に教えてください。

小澤:アーティストやクリエイターが誰でもファンクラブを作ることができるサービスです。既存のファンクラブというものは、初期コストがかかったり、外部の会社の力が必要だったりと、メジャーではないアーティストたちにとっては設立のハードルが高く、コストを回収できる見込みのある一部の人気アーティストしか作ることができない状況でした。インディーズや地下アイドルなどのミドル層のアーティストにも、数は多くなくても必ずファンがいます。「ファンがいるのに初期コストが高いことでファンクラブをつくれない」という課題を解決する仕組みとしてCHIPを作りました。

–このようなカテゴリーでビジネスをはじめた背景は?

小澤:僕自身、小学生の頃からドラマーとしてプロを目指していたのですが、高校卒業時、アーティストとして生きていく環境面の難しさを考慮し夢を諦めました。また周囲を見渡した時に、自分と同じように、アーティストやクリエイターを目指しながらも、家庭の事情や経済的な理由で夢を諦めていく人が数多くいることに気づき、何か支援できないかと考えはじめたのがきっかけです。才能があって、いいものを作っているにもかかわらず、自分の努力と関係のないところで夢を諦めていく人を減らしたい。アーティストやクリエイターたちのより自由な活動を、金銭的にも精神的にもサポートしたい。そんな思いが強くあったんです。

–では、元々はCHIP以外のやり方でも、クリエイター支援の形は検討されていたんですか?

小澤:はい、いろいろ考えていました。元々は、CTOがアニメに精通していたこともあり、日本国内で厳しい労働環境下にいるアニメーターを支援するアニメ系の事業などもいくつかアイデアがありました。どれも会社としては回りそうだったのですが、「本当にクリエイターのためになるのか?」ということに立ち返り話し合いを続けた結果、CHIPにたどり着きました。

–ローンチ後の反響はどうでしたか?

小澤:非常に良かったです。ローンチ直後に、インフルエンサーの方々が反応して使い始めてくださったことで、横のつながりで利用者が増えていきました。また興味深かったのが、経営者や漫画家やイラストレーターなど、従来ファンクラブを持つイメージがない方々が使ってくださったことです。CHIPをきっかけにファンクラブを持つこと自体の意味合いが広がっていると感じています。

–ローンチ時からブランドムービーを公開していたのが印象的でした。CHIPのサービスでは、クリエイティブやブランディングの必要性をどう捉えていますか?

小澤:サービスとして便利かということ以上に、アーティストやクリエイターの世界観を守ること、その活動やブランディングをサポートすることを重視しているため、CHIP自体のブランディングは非常に大切なんです。CHIPがダサければそれを利用するアーティストもダサくなってしまうし、CHIPが金儲けだけを考えて課金の仕組みを作ってしまうと、お金のためにファンクラブを作っているアーティストに見えてしまいます。だから、CHIPが常にかっこよくワクワクするものであることは、それを使うアーティストに対する、サービスの責任だと考えています。

はじまりは「ビジネスをやりたい」ではなく「支援がしたい」

–ここからはイノベーターとしての小澤さんにお尋ねします。今の時代における、小澤さんの価値はなんでしょうか?

小澤:強いていうのであれば、僕は経営者である前にアーティストであり、クリエイターであることです。元々から本気でやってきた音楽活動を今も続けていたり、プログラミングをやっていたり、デザインもやっています。そういった幅の広さというか、クリエイティブも見ることができる経営者というのは稀なので、一つの強みだと考えています。

–小澤さんが新しいアイデアや企画を考える際に大事にしていることは?

小澤:根底にあるのは、繰り返しになりますが、「アーティストやクリエイターにいい影響を与えるか、その活躍の機会が広がるか」ということに尽きます。会社やサービス自体のはじまりが、何かビジネスをやりたいということではなく、彼らの支援がしたいという思いだったので。仮にCHIP以外の事業をこれから立ち上げるタイミングがあったとしても、その軸からぶれることはないと思います。あと、その思いが原点にあるからこそ、CHIPがサービスとしてアーティストやクリエイター、ファンからも共感を得ることに繋がり、競合サービスとの差別化ポイントにもなっていると感じているので、これからも大切にしていきたいです。

–小澤さんにとっての失敗の定義とは?

小澤:僕はアーティストとしての活動と経営はすごく似ていると考えています。アーティストの場合、楽曲がうまく作れなかったり演奏がうまくできなかったから失敗かというと全然失敗ではなくて、どんなに失敗しても最終的に曲を披露してお客さんが喜んだりワクワクしてくれればいいんです。僕にとっての経営はそれと同じで、サービスにおける施策が失敗するとかは極端な話どうでもよくて、最終的にサービスを利用するアーティストとファンの方々を喜ばせることができればOKと考えていることもあり、目先のうまくいかないことを失敗と捉えないようにしています。

–最後に、今後の小澤さんの野望を教えてください。

小澤:CHIPに限らずですが、才能あるアーティストやクリエイターがやりたいと思ったことを自由にやれる環境をつくるためのサポートや仕組み作りをやっていき、誰でもアーティストやクリエイターになれる世界にしていきたいです。

Interview & Text:長島龍大
Edit:市來孝人