クラウドリアルティ 不動産×金融で目指す「すべての人が価値交換できる世界」/採択企業インタビュー

2019.02.15

電通と多彩なメンター陣による、スタートアップ支援プログラム「GRASSHOPPER」。3月開催予定のデモデイに向けて、1月より第1期のメンタリングが行われている。

並行し、第1期採択企業へのインタビューをスタート。事業内容や当プログラムにおける目標などを聞いていく。今回は不動産に特化したP2P型の直接金融プラットフォーム「Crowd Realty」を運営する株式会社クラウドリアルティ。代表取締役 鬼頭武嗣に、前編では事業内容や今後の展望について聞いた。

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日本の不動産市場にアクセスできる物件は、わずか1.5%

–まず「Crowd Realty」とはどのようなプラットフォームですか?

鬼頭:例えば京都の町家をリノベーションして、宿泊施設に変えたい人がいるとします。古い町家は担保価値がなく、銀行融資では資金調達ができないという時、その町家を証券化して、クラウドファンディングで小口でいろんな出資者からお金を集めてリノベーションを実現していくような形です。

不動産に特化したクラウドファンディングのマーケットプレイス、と言っているんですが、本質的には投資銀行サービスを提供しているプラットフォームです。前職はメリルリンチで企業のIPOや公募増資の支援をしていたのですが、その投資銀行業務のデジタル化、プラットフォーム化を進めています。

金融の大きな原則として、「適合性の原則」という、出資・投資をする人に最適なものを渡さなければいけないというシンプルな原則があります。その判断基準に用いられるのは、投資経験や財産の状況などが中心でした。ですが、町家のような遊休不動産の再生に対しての関心が強いかとか、その土地やファンドの起案者をよくわかっているかといった、様々な価値判断を含めた適合性を、当社は追求していきたいと考えています。

–起業のきっかけを教えてください。

鬼頭:メリルリンチ時代の気づきです。日本の不動産は全体で2,400兆円規模と言われています。しかし、その中で資本市場からお金を集めることができる物件はほんの一握り、たった1.5%と知りました。自分がいた金融機関では、その小さいマーケットにしかサービスを提供できていないことに課題意識を感じて、100%誰でもアクセスでき、そこで価値交換を行うことができるインクルーシブな資本市場を新たに作りたいと思うようになりました。

–もともと不動産という分野に関心があったのでしょうか?

鬼頭:実家が不動産業をやっているので、家業を見ながら育ったのと、大学では修士まで建築をやっていたこともあって、自分の周りには昔から建築に関わる人が多かったんです。なので不動産や建築が自然と人生のテーマになった感じですね。ただ、そんな自分にとっては身近な世界が、メリルリンチでやっていた資本市場の世界からは遠いんですね。それらの世界を繋げるためにはどうしたらいいかと色々考えました。

現在も、自分はアーキテクト(建築家)であると思っています。建物のデザインや設計施工には直接関与していないですが、色々な金融スキームやテクノロジーを統合して資本市場という大きなアーキテクチャーをデザインし、都市や社会に実装するために働きかけていく。アーキテクト的な考え方を活かして仕事をしているんじゃないかと思っています。

–直近の展望を教えてください。

鬼頭:まずはこの投資銀行プラットフォームをもっと効率的に、もっとデジタルに、いろんな人に使えるようなインフラにして、日本だけではなく世界に社会実装していきたいなと思っています。今もエストニアの子会社を通して欧州各国の需要に応えていますし、今後は北米やアジアでの展開も視野に入れています。

普遍的な金融マーケットをデザインしたい

–鬼頭さん自身の社会における価値はどのようなものだとお考えですか?

鬼頭:まず、全ての人がそれぞれの価値をもっていると思います。一方で今の金融マーケットは、それらの価値を受け止め切れてない。担保価値などの特定の価値基準だけに支配されていて、それに合致しないとそもそも価値交換ができないという課題に直面しています。

全ての人がそれぞれの価値観に従って価値交換できること、そのような資本市場を作っていくという覚悟をもって取り組んでいることが私の存在価値かなと思います。誰でもどこでも国も問わず世代も問わずアクセスすることができる、普遍的な金融マーケットをデザインして作りたいというのが僕のモチベーションなんです。

起業家として、それを実現する手段は会社だけに限らないと思っていて、国のサンドボックス制度の委員を務めたり、Fintech協会という業界団体を通して海外のスタートアップや規制当局とも連携したりと、様々な時間軸で考えて今やるべきことをやっています。

–チャレンジしていく中での失敗の定義はありますか?

鬼頭:自分が目指していることを信じられなくなったり、自分に嘘をつき始めると失敗なのかなと思います。自分が掲げたビジョンに忠実に、正直に、生きていれば本当の意味での失敗というのはなく、全てがビジョンの実現に向けた過程の一つに過ぎないのかなと思います。

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Interview & Text:市來孝人