フィンテックを民主化しよう。「楽しい貯金」で、世の中とお金の距離を近づけるfinbee・田村栄仁

2019.02.01

電通と多彩なメンター陣による、スタートアップ支援プログラム「GRASSHOPPER」。クリエイティブのチカラを実践しているイノベーターへの取材も実施し、スタートアップとクリエイティブの関係性について探っていく。

今回は、「世の中とお金の距離を近づけたい」そんな想いから、歩数や特定の場所へのチェックインなど、暮らしの中のさまざまなアクションで、簡単に楽しく貯金ができるfinbeeを立ち上げた田村栄仁。

2016年のフィンテック元年以降、ロボアドバイザーや仮想通貨など、さまざまなビジネス・サービスが登場してきた。一方その発展とともに、テクノロジーや専門性は高度になり、一般消費者とお金の関係が乖離しつつあるという見方もある。そんな中、銀行とライブドアという、金融・ITそれぞれのキャリアを持つ田村に、finbeeにかける想い、そして自身が描くフィンテックの未来像を聞いた。

「貯金」を入り口に、世の中とお金の距離を近づけたい

―フィンテック領域が盛り上がるとともに、多くのサービスが生まれています。その中でも「貯金」に注目した理由は何だったのでしょうか?

田村:finbeeは「世の中とお金の距離を近づけたい」というところからスタートしています。金融サービスというと、ただでさえ難解なイメージを持たれがちで、暮らしの中で本当に必要な時にしか触れられる機会がないものです。それにもかかわらず、昨今では専門性の高いサービスが次々と登場し、世の中とお金の間にどんどん距離が生まれています。そこで、すべての日本人にとって馴染みのある「貯金」というアクションを入り口に、普段の暮らしの中でローンや投資といった金融サービスに触れ、生かしてもらう機会を作ることで、人の暮らしをより良いものにできるのではと思いました。


―「貯金を楽しくする」がコンセプトのfinbeeですが、そのための仕掛けを教えてください。

田村:貯金のルールに特徴を持たせています。「よし、貯金するぞ!」と意気込むよりは、「楽しそうだから貯金してみよう」と思えるように「歩数貯金」や特定の場所に近づいたらお金が貯まる「チェックイン貯金」などを、自分の決めたゴールに合わせてユーザーが自由にカスタマイズできます。起きた時から寝るまでのふだんの生活動線上にあるアクションを貯金に結びつけることで、知らず知らずのうちにお金が貯まっている世界を目指しています。

―ロゴやサービス名にも親しみやすさを感じました。そういったクリエーティブ的な側面にもこだわっていますよね。

田村:その通りです。フィンテック領域のサービスとして語られることが多いfinbeeですが、ゴールは、すべての人が親しみのある「貯金」をサポートすることで、金融を身近に感じてもらうこと。なので、多くの人に愛されるようなデザインにしています。

「楽しい貯金」のあとの「賢い消費」まで手助けしたい

―現在は「貯金」にフォーカスしていますが、ゆくゆくは、お金が貯まった後の「消費」の部分のサポートも視野に入れているのでしょうか?

田村:そうですね。これまでは、貯金に対する「面倒くさい」や「しんどい」といったネガティブなイメージを払拭し、暮らしの中で簡単に楽しく溜まるという「生活の貯金化」を目指してきました。今後は、貯金のその先の「賢く使う」という消費の部分もサポートしていきたいです。貯金の元々のきっかけであった欲しいものの購入や旅行の予約をサポートするのはもちろん、もし貯まらなくても諦めるのではなく、旅行会社が目標金額より安い旅行プランを提示してくれたり、銀行が運用のレコメンドをしてくれるなど、さまざまな事業会社と連携することで、新しい消費行動を生んでいきたいです。

―ユーザー側の「賢い消費」をサポートできると同時に、提携する事業会社側にも、新たなビジネスのチャンスが生まれるということですね。

田村:finbeeには、ユーザーのリアルタイムの貯金データという強力な資産が生まれます。これまで世の中にあったのは、「いつ・誰が・何を・いくらで買った」という過去の決済データでした。一方finbeeには、たとえば「この人が冬にバンコクに行くと言っています!」といったような消費を予定している人のデータが集まります。なので事業会社側には、未来に購入や消費の予定があるよ!と手を挙げている人に、商品を売り込むことができるという新しいマーケティング手法を提案できるんです。

「“知る人ぞ知る”をなくしたい」情報の不均衡を解決するビジネスで、世の中を明るく

―田村さんがゼロから企画やビジネスアイデアを考えるときに、意識していることはありますか?

田村:「情報や知識の不均衡を解決するアイデア」を考えることです。常に高いアンテナを張っていたり、質のいい口コミや情報に囲まれている人がいる一方で、良質な知識や情報にアクセスできない人がさまざまな機会を損失することをなくしたいです。

ローンや投資に関する知識や情報が足りないことで、欲しいものを買ったり、家族で旅行に行くチャンスを損失してしまうのは、すごくもったいないと思います。すべての人にとって一番身近な「貯金」を通じて、最終的にはローンや投資など、様々な金融サービスに触れられる・アクセスできることを目指しています。ネットビジネスを使って情報や知識の不均衡を正し、どんな人でも平等にチャンスが得られる、そんな世界を強烈に作り続けたいです。

―銀行やライブドアでの経験を経て起業したと聞きました。キャリアチェンジの中で、ターニングポイントとなった人との出会いはありましたか?

田村:特定の人はいませんが、ライブドアへの転職やfinbeeとしての起業など、これまで歩んできたキャリアは、すべて人との出会いから生まれています。自分から積極的に転職や起業にチャレンジするタイプではなかったので、その場その場での人との出会いや誘いを信頼して、誘われた案件の面白さというよりは、誘ってくれた人を信じてさまざまな決断をしてきました。その意味では、出会いの神様に愛されていると思います。

―今後の田村さん、そしてfinbeeの野望を教えてください。

田村:多くの人が、少子高齢化などの控える将来に不安を抱いていて、その上、いざモノを買おうとしても、ネット上には情報が溢れすぎていて、何を買っていいかわからない、どこに行っていいのかわからない。消費に対して臆病にならざるを得ないのが現代だと思います。

そんな時代に、その人が「一番幸せになれる消費と貯金」を届けたいです。たとえば「疲れたからなんとなく温泉に行きたい」という人に対して、その人にぴったりの温泉とそのためのゆるやかな貯金をサポートする。強い欲求ではなく、もやっとした欲求がある人に対して、その人が一番幸せになれるモノやサービスを提案し、貯金でもローンでも、それを実現できるところまでの道筋を立ててあげる。その結果、世の中の全体の消費を拡大し、日本全体も元気にしていきたいです。

Interview & Text:長谷川きなみ
Edit:市來孝人