ムスカ「45年1100世代以上」のハエを事業にできた経緯とは/採択企業インタビュー

2019.03.12

電通と多彩なメンター陣による、スタートアップ支援プログラム「GRASSHOPPER」。3月開催予定のデモデイに向けて、1月より第1期のメンタリングが行われている。

並行し、第1期採択企業へのインタビューをスタート。事業内容や当プログラムにおける目標などを聞いていく。今回は45年に及ぶ研究期間を経て生まれた優秀なイエバエ幼虫を使った循環システムを運営する株式会社ムスカ 代表取締役 暫定CEO 流郷綾乃。前編では事業内容や、事業のベースとなる研究について聞いた。

後編はこちら

ゴミから資源を二つ、最速で生成

–はじめに、事業の内容を教えてください。

流郷:私たちは、昆虫を活用して、100%バイオマスリサイクルシステムを確立させた、昆虫テクノロジー企業です。どのような仕組みかというと、生ゴミや畜産の排泄物等の有機廃棄物に、ハエの卵をパラパラと蒔くことで、動物のエサとなる飼料と農家が使う肥料に1週間で分解される、すなわちゴミから資源を二つ、最速で生成することができる、という循環システムを構築しています。

このシステムの根幹であるハエは、45年間、1100世代以上も選別交配を行っています。いわば、「サラブレット化されたハエの種」を保有しているということです。

–1100世代以上ということで、その歴史の深さに驚いてます。もともと45年前にこの研究が始まった背景は?

流郷:私たち事業の研究起源は、旧ソ連の宇宙開発事業の1つでした。アメリカと旧ソ連が宇宙開発技術で競っていた時代、アメリカの月への有人飛行に対抗して、ソ連では火星への有人飛行を目指していました。火星への飛行の研究を進めていく中で、火星往復に4年もかかることが明らかになり、4年間の宇宙飛行士の排泄物と食料をロケットの機内で循環する仕組みとして、昆虫を使ったこのシステムの起源にあたる技術が生み出されました。

その後、ソ連崩壊により、様々な研究が一斉に売り出されたタイミングで、弊社の創業者である会長 串間充崇の先代企業の社長である小林一年氏が当時のロシアの研究技術を買い付け日本に持ち込んだのがきっかけです。

–20年ほど前からこの技術を日本に輸入していたにも関わらず、事業として確立されていなかった理由はなんでしょうか。

流郷:輸入当時は、この技術を先代である小林氏が創造する循環型まちづくりに必要な技術として、自分たちのために活用した技術だったのです。もちろん、この技術をビジネスにしようとしていた時期もありました。しかし当時は、環境問題もほとんど騒がれておらず、SDGsやサステナビリティといった言葉もなかったので、研究自体に対する評価は高かったものの、嫌われ者のイメージがあるハエを使った技術への出資ハードルは高かったようです。

昨今では、世界中で人口増加による将来的なタンパク質不足が問題視されていることから、限りある自然界の資源である動物性タンパク質飼料(魚粉など)に代わる飼料として、昆虫タンパクに対する注目が急激に高まっています。

–昆虫を使った飼料や肥料の優位性はなんでしょうか。

流郷:飼料としての昆虫性タンパクの強みは大きく3つです。1つ目は、耐病性付与効果という、抗生物質の代わりとなる効果です。この効果を活用すると、オーガニックな養殖魚が誕生する可能性があります。これは、世界的にも前例がないため、非常に大きなインパクトを持っています。

2つ目は、誘引効果の高さ、すなわち動物の食いつきがよく、確実にしっかりと食べ残しなく食べてもらうことができること。

3つ目は、増体効果が高く、出荷サイズに早く到達できるので、エサのコストを半分以下に抑えることができ、これも養殖業界において非常に大きなメリットになります。

このように、飼料としてだけでも十分すごいのですが、さらに肥料に関しても、病原菌を抑制する役割を持っていることが明らかになっており、ムスカ肥料を使うことでその土地の土壌環境を改善することができます。

そして最後に、ゴミから優れた資源を生み出す仕組み自体が持続可能な循環システムになっており、昆虫タンパクが普及すること自体が、地球を守ることに繋がっているのが大きな魅力だと考えています。

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Interview & Text:長島龍大
Edit:市來孝人