ムスカ「昆虫産業自体のブランディングをしていきたい」/採択企業インタビュー

2019.03.12

電通と多彩なメンター陣による、スタートアップ支援プログラム「GRASSHOPPER」。3月開催予定のデモデイに向けて、1月より第1期のメンタリングが行われている。

並行し、第1期採択企業へのインタビューをスタート。事業内容や当プログラムにおける目標などを聞いていく。今回は45年に及ぶ研究期間を経て生まれた優秀なイエバエ幼虫を使った循環システムを運営する株式会社ムスカ 代表取締役 暫定CEO 流郷綾乃。後編では昆虫産業の可能性・課題や、GRASSHOPPERプログラムに期待することについて聞いた。

前編はこちら

医学や薬学などのフィールドも含め、応用の可能性に溢れている

–前編で事業内容について聞いてきましたが、聞けば聞くほど昆虫の可能性を感じます。その一方で、昆虫産業を広げていく上で課題はなんでしょうか。

流郷:世界共通で挙げられているネガティブ要因は、ハエや昆虫に対するイメージによる心理的ハードルでしょう。そもそも日本でも、ハエたたきという言葉があるくらいですので…(笑)。基本、嫌われていますよね。

という時に、私たちはこのまま昆虫を活用したビジネスとして拡大させるだけではなく、昆虫の再定義をしていかなければならないと思っています。飼料肥料だけ黙って販売すればいいのでは?といった意見をいただくこともありますが、昆虫の持つポテンシャルを踏まえると、それだけではもったいないと考えているんです。

なぜなら、食糧や環境だけでなく、医学や薬学などのフィールドも含めてまだまだ応用の可能性に溢れているからです。昆虫が現在未利用資源である以上、その価値は未知数ですが、価値を形にしていくと、世界の社会課題、地球の抱える問題が解決できることを世の中に広く伝えることで、昆虫産業自体のブランディングをしていきたいと考えています。

–もともと広報領域のフリーランスだった流郷さんが、ムスカの代表になった経緯を教えてください。

流郷:先代の会社から事業を継承し、創業者の串間が、イエバエの技術だけの会社ムスカを立ち上げる際に出資をした会社があり、そこに私は執行役員として参画しておりました。そこからの出向でムスカの執行役員となり、2018年7月に代表取締役暫定CEOに就任しました。(2017年9月にベイシズ執行役員に就任。同11月、ベイシズの指名によりムスカ執行役員として経営参画。2018年7月、現職に就任)

フリーランス時代から、自分の仕事の軸として、「自分の子供たちが80歳になった時に、その事業は面白いのか、役に立つのか」という視点を大切にしていました。子どもが80歳になった時、面白い!ということは、次の世代、その次の世代にも愛される事業であるということですよね。そこに関わって仕事しているということは、誇りを持って仕事ができるじゃないですか。

そして、他の面白みとしては、ハエを再定義するということでしょうね。この仕事のスケールとやりがいの大きさに魅力を感じ、ジョインしました。

現在は認知を広げるフェーズということもあり、PR戦略を担ってきた私が代表になっています。今後事業を広げるフェーズが来た時は、経営に求められる素質が変わりますよね。そこで適切な人材にCEOが変わるべきだと思っています。それは、CEOに限らず、COO、CFOをはじめとする主要ポジション全てにおいて言えることです。そんな思いを社内で共有していることから、暫定CEOという名称を使っています。また、経営人材獲得のための採用広報の一環でもあります。

–GRASSHOPPERのプログラムに期待していることはなんでしょうか。

流郷:世界を目指していく上で、コーポレートアイデンティティをしっかり確立させて、その上で、伝わるメッセージ構築していきたいと考えています。現状はシンプルに、「昆虫テクノロジーで、飢餓をなくす」と謳っているものの、実際には、解決している問題が非常に多岐にわたっています。飼料肥料の生産を通じて人類の健康を担う企業としてだけでなく、ゴミを減らすことで地球の健康を修繕する企業でもあるといった事業や理念の確立と、それを外に向けて発信していくメッセージやクリエイティブ開発を一緒にやっていきただきたいと思っています。利権や損得だけに振り回されない、ムスカ事業の主軸を確立することで、様々な判断の基準にし、拡大に伴うリスクを軽減していきたいです。

–先日の「Industry Co-Creation ™ (ICC) サミット FUKUOKA 2019」の「REALTECH CATAPULT リアルテック・ベンチャーが世界を変える」では優勝されました。感想・振り返りなどを教えてください。

流郷:反省点の多いピッチでした。今回の優勝は特にチームの存在を強く感じました。あまりの忙しさに、心身ともに限界手前のところにいたのですが、私の不甲斐ないピッチをよそに優勝に導いたチームメンバーの日々の貢献に心から感謝しております。一人で背負い込んでしまいがちな私にハッとさせるいい経験となりました。これほどまでに心強くチームに出会えていることを感謝すると共に、みんなを守れる存在になりたいと強く思いました。

そして会場にいる皆様がとても温かく見守ってくださったおかげでもあります。何がきっかけでもいいので、ハエに対して、新しいイメージを皆様に持っていただけたら、これ以上なく大変嬉しく思います。

–最後に、長い目で見た時に、ムスカが成し遂げたいことを教えてもらえますか。

流郷:世界的昆虫産業メジャーになっていること。そしてその中で何を解決していくかというと、世界の飢餓人口をなくすことと、地球の健康も守ってしっかりと共存していくということです。ムスカは、社会貢献企業でありたいと思いますが、NPOではないんです。今の世界においては、NPO自体も株式会社化していかなければならないし、株式会社もNPO化していかなければならない、と私は考えています。それこそが、究極の循環型社会だと私は信じています。

前編はこちら

Interview & Text:長島龍大
Edit:市來孝人