「食のインフラ」導入により、観光客にとっての”美味しいオリンピック”を Super Duper/採択企業インタビュー

2019.03.08

電通と多彩なメンター陣による、スタートアップ支援プログラム「GRASSHOPPER」。3月開催予定のデモデイに向けて、1月より第1期のメンタリングが行われている。並行し、第1期採択企業へのインタビューをスタート。事業内容や当プログラムにおける目標などを聞いていく。今回は、外国人旅行客の食や観光体験を変えるチャット型多言語レストランメニュー「Satisfood」を開発する、株式会社Super Duper 代表取締役 鈴木知行。前編では事業内容や、起業のきっかけについて聞いた。
※2019年3月15日をもって、チャット型多言語レストランメニュー「HeY」は「Satisfood」へサービス名を変更。

ー今回の新サービス名に込めた思いを教えてください。

鈴木:もともと「HeY」という名称は、日本語の「へい、いらっしゃい」と英語の挨拶「Hey」から名付けられたものです。ラグビーW杯の開催を間近に控えた今年、サービスも拡大期に入り、世界中のお客様にお使いいただく中で、サービス名のリニューアルを決断しました。

「Satisfood」という名前は、電通日本開発室とのディスカッションの中で生まれたもので、サービスの「機能」を説明するのではなく、旅行中に最高の食体験がしたいと思う旅行者の「情緒」に訴えかける名前にしようと、「満足」と「フード」の掛け合わせから誕生しました。また、ロゴデザインにもこだわっています。「Satisfood」の導入店は、高級店からカジュアルなお店、ラーメン店のような専門店から居酒屋まで実に多様なので、それぞれのお店が構築してきた世界観やテンポを壊さないようなデザインを意識しました。旅行者のお客様の反応も上々で、ホッとしています。

食体験を「ルーティーン化した胃袋を満たす行為」から「脳や心を満たす体験」に

ーはじめに、事業内容について教えてください。

鈴木:弊社では、訪日外国人旅行客のための事業を展開しています。社名の「Super Duper」は「最高」という意味で、使った外国人のお客さまに「最高!」と言ってもらえるようなサービスづくりにこだわっています。

当初は、お店の人と外国人旅行者の間に生まれる言語ギャップを埋めるための、多言語接客トレーニングアプリ「Parrot」に注力していました。ただ開発を進めていく中で、言語の壁を超えただけでは、なかなか外国人の方々に喜んでもらえないことに気づきました。たとえば飲食店で、単純にメニューを母国語に翻訳すれば言語では理解できますが、そもそも日本食がどんなものかがわからないと、結局食事を楽しめないんです。

そんな不満を解決すべく、チャット型多言語レストランメニューを開発しました。単純にメニューを翻訳して提供するのではなく、そのメニューをレコメンデーションエンジン化することで、「最高!」と言ってもらえる食体験を提供しています。

ー鈴木さんがトラベル×フードの分野で起業しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

鈴木:昔から海外旅行が大好きで、以前外資系企業に勤めていた時も、海外出張後は家族を連れてバケーションをとったりしていました。その経験の中で感じたのは、旅先で一番記憶に残るのはどんなに有名な遺産や遺跡よりも、「食」であるということです。網膜に映るモノと、自分の体内に取り込まれるモノの記憶の残り方に大きな違いを感じました。

一方、旅先での食体験の満足度にも疑問を持っていました。よくあるのは、旅に出る前は「現地でしか食べられないものを食べよう!」と意気込んでいながら、いざ現地のレストランに行くと、言語がわからない・料理がわからない・疲れているといった事態に陥って、いつのまにか自分が知っているいつもの料理を必死で探して、オーダーしているというケースです。実際には胃袋はかなりコンサバティブです。そんな”鎖国状態”になっている旅人の胃袋を、テクノロジーの力で開国してあげることで「最高!」と言ってもらえるのではと考えました。

ー具体的に、どんなレコメンデーションが行われるのでしょうか。

鈴木:たとえば、現地の季節にあった食事のレコメンドなどができます。「鍋料理」に親しみがなくても、「日本の冬に鍋はぴったりです」といったストーリーを聞けば聞くほど、食事が楽しく美味しくなりますよね。

有名な観光地に行くと、必ず詳細なマップやその地の歴史が記載されたパンフレットがあります。しかし、食事にまつわる背景やストーリーはないがしろにされがちです。どういう順番で食べるべきか、どこでハイライトがあるかがわからない、いわばメニューには「地図」や「ストーリー」がない状態なのです。すべての食事やレストランにはストーリーがあるし、さらに遡れば、食材を提供する生産者の方にもストーリーがあります。生産過程からのストーリーを含めて多言語でマッチングすることで、食体験を「ルーティーン化した胃袋を満たす行為」から「脳や心を満たす体験」にしたいです。

ー今後数年の間、東京そして日本には予想もしなかったような数の外国人観光客の方が訪れるはずです。「Satisfood」が提供できる社会における価値は何だとお考えですか?

鈴木:2019年のラグビーW杯や2020年の東京オリンピック・パラリンピックのタイミングで日本に訪れる方々の一番の目的はもちろん試合の観戦ですが、「Satisfood」を通じて最高の食体験を提供することで、訪れる人にとっての「美味しいオリンピック」になることを目指したいです。オリンピック・パラリンピックを迎える街の多くは、道路やモビリティなどの交通インフラの整備に注力することが多いのですが、僕たちは食のインフラである「Satisfood」の導入に注力することで、どの街に行ってもメニューが提案される世界を作りたいです。最終的には、東京の街を、スペインのサンセバスチャンのような美食の街に負けない、美食「体験」の街にしていければと思います。

ーSuper Duperとしての今後の展望を教えてください。

鈴木:2020年までは日本国内にフォーカスし、それ以降はパラレルで海外展開も進めたいです。世界中の飲食店において、紙かタブレット型かなどの微差はあるものの、基本的なメニューという形式は同じなので、世界中のメニューを「Satisfood」に変えていきたいと考えています。

Interview & Text:長谷川きなみ
Edit:市來孝人