SXSWのローンチイベント・ピッチイベントでの注目企業は?スタートアップ10選

2019.03.29
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毎年3月にアメリカ・オースティンで開催される、クリエーティブ・テクノロジー・ビジネスの祭典「SXSW(サウスバイサウスウエスト)」。2019年は3月8日から10日間にわたって開催された。

SXSWの初日、3月8日に開催されたのが、ビジネスの目玉企画といえる「SXSW RELEASE IT」。ショートリストされた10社による新サービスやプロダクトのローンチ発表イベントだ。もう一つの目玉企画が「SXSW PITCH」。アメリカを中心に世界中からエントリーした800社以上の中から、ショートリストされた50社がピッチを行うイベント。3月9日と10日の2日間にわたって開催された。この二つのイベントをGRASSHOPPERメンバーも視察。登壇した企業を中心に、クリエーティビティ・インパクトの観点から10社を紹介する。

人間の代わりに利用規約を読んでくれるAI・ML / Osano

Webサイトに小さな文字でビッシリと書かれた利用規約。大事だと思っていても、ついつい読まずに承認してしまう…。これは世界共通だそう。OsanoはFine Print (利用規約など小さくビッシリ書かれた法的文言)を人間の代わりに読み、危険度を判定してくれるサービス。

AIやML (Machine Learning)はヒトができることの効率化…このようなイメージもまだまだあるかもしれないが、ヒトにできる・できないではなく、ヒトがやっている・やっていないの観点でAI・MLの利用シーンを見つけた点が鮮やかであった。

交通にハンディキャップのある人による街のレビュー・プラットフォーム/ iAcccess

スロープやエレベーターがなく、階段で登り下りしないといけない…。これは車椅子の方にとって大きな問題。iAccessは、マップ上でその場所のアクセシビリティを評価し、街の声を集約していくプラットフォーム。

実際に困った経験がある人の声が蓄積されていくことで、課題が見える化していく面白い仕組み。一見マーケットが小さく見えるかもしれないが、ベビーカーや高齢者の方など潜在的なユーザーは多そうだ。

前後にLEDのついた自転車用ヘルメット/ Lumos Helmet

車やバイクと違って、自転車にはサインを出すライトが通常ついていない。しかし、減速や方向転換を知らせるコミュニケーションはできた方が良いし、そもそも存在を視認されるうえでライトなしでは危険…。そんな中、Lumos Helmetは前後についた明るいLEDで、周囲とのコミュニケーションを可能にするヘルメット。

米Apple Storeで売っているなどすでに有名なプロダクトとなっており、今後、スクーターやスケートなどにも対応していく予定だそう。

世界初のデジタル・ナンバープレート / REVIVER

Lumos Helmetにもあった、これまでアナログだったものをデジタルにすると何が起こるか、という観点ではまだ面白い発想が残されているはず。REVIVERは世界初のデジタル・ナンバープレートだ。

これまで数百年アナログだった車のナンバープレートをデジタル化し、カリフォルニア州とアリゾナ州では実装段階にあるそう。「子供が乗っている」「盗難車です」「駐車許可あり」など様々な情報を臨機応変に表示できるのが強みで、自動運転・電気自動車時代には当たり前になっていくかもしれない。

大麻のプラットフォーム / Leaf Tyme

医療・娯楽目的での大麻使用が合法の州が増加しているアメリカ。それによって大麻の売買場所がストリートから薬局へと急速にシフト。Leaf Tymeはそこに目をつけたサービスで、どこで合法の大麻を購入できるのか分からないユーザーと、合法の大麻を販売したい薬局・ブランドを繋ぐプラットフォーム。

Eコマースも検討しているとの弁があり、商材の特殊性と時代の変化をうまく捉えることで、既存の巨大プラットフォームの抜け・漏れを突く好例といえる。

タトゥーのプラットフォーム / Slate Tattoo

Leaf Tymeと同様の観点で、PITCH TEXASというイベントで登壇していたタトゥーのプラットフォーム・Slate Tattooも新鮮であった。

タトゥーを入れることは個人にとって非常に重要なイベントだが、タトゥーショップは個人経営が主となっており情報が集約される場がない…。そこで、豊富な情報の集まるプラットフォームをつくるとともに、そこで両者をマッチングさせるというものだ。

10分単位の動画でつながるSNS / 10 BLOCK

1時間など長い単位の番組が依然として多い一方、実生活で動画を観られる状況はもっと短い細切れの時間…。そんな生活に対応する10 BLOCKは、10分単位で完結もしくは分割された映像のSNSだ。

参加者は動画をシェアしあったり、既存コンテンツを視聴したりする。通勤単位などの隙間時間を狙ったサービスで、動画を「ひとくちサイズ」にしたとのこと。15秒のCM、140文字以下のTwitterのように、単位の規定は独自の文化圏の構築になりうるだろう。

株式のようにアーティストに投資/ RIteband

アーティストとファンの新たな関係を提示するサービス。Ritebandではアーティストに出資することで、将来生み出す収益の権利自体を保有できる。

株主は曲が売れた場合のロイヤリティ収入のみならず、株式自体の売買によるキャピタルゲインも期待できるという、株式市場原理を音楽業界に導入したユニークな仕組み。ファン目線ではなく投資家目線でアーティストを見る、そんな見方も次第に普及するかもしれない。

音楽の制作過程が残る作曲プラットフォーム / The LABZ

複数人で作曲することも珍しくない昨今。作曲者は誰だったのか権利で揉めてしまうことも多いよう。アメリカでは数十人が権利を主張した曲もあったとか。そんな中有用なのが、作曲履歴の残る作曲プラットフォーム・The LABZ。

誰がどこを制作したかがトラックされ、自動で権利が分割されるアルゴリズムを内製化している。音楽に限らず通常の仕事や、映像・広告業界でもいつか起こりうるトレンドといえるだろう。

表現を与えられた、街のストーリーを感じられる地図 / Stroly

正確な位置情報を知るための地図サービスは充実している昨今。しかし、そこでは街のストーリーがそぎ落とされてしまっている…。Strolyは絵画など、街の特徴や注目すべき場所がデザインされた地図のプラットフォーム。

SXSW PITCHに登壇した唯一の日本企業で、SXSWの公式マップも作成している。イラストの地図上でも現在地を表示できる技術をもっている。正しさや効率化だけではなく、デザインや豊かさによって戦いのレイヤーを変えることができる好例だ。

今回ご紹介した以外にも、面白いアイデアはたくさん。SXSW PITCH・SXSW RELEASE ITのHPに概要や各社へのリンクが載っている。日本市場だとどのように展開できるか?他の商材だとどのようなサービスになるか?同じ課題を他の方法で解決できないか?など、ヒントを得られるかもしれない。

次々と発表されるテクノロジーやアイデアをビジネスとして世に送り出す、そのためのイベントまでSXSWは内包している。一つのエコシステムとしても面白い仕組みとなっている。