なぜ「サーフィン」に目をつけたのか?ニッチな領域で事業展開するための考え方—NobodySurf 岡田英之

2019.04.25

先日第一期プログラムが完了したスタートアップ支援プログラム「GRASSHOPPER」。当サイトでは、クリエイティブのチカラを実践しているイノベーターへの取材も行い、スタートアップとクリエイティブの関係性について探っていく。

今回は、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)、個人投資家、アドウェイズらから2億3千万円の資金調達を一昨年行った、リブルー 代表取締役 岡田英之。

リブルーは、世界各地のサーフィン動画作品を楽しむことができる動画サービス「NobodySurf」を運営。一見ニッチな領域だが、実は大きな可能性があるようだ。サービスを立ち上げた経緯、サーフィン市場に飛び込んだ理由とは?

世界のサーフィン人口は、市場が成り立っている世界の野球人口と同じ

–まずは、サービス内容を教えてください。

岡田:NobodySurfは、世界中で作られている高いクオリティのサーフィン動画作品を集め、アプリとソーシャルメディアとウェブで展開しています。

今までサーフィンの動画はYouTubeに上がっていたり、Instagramなど個々のソーシャルメディアに点在していたりと、まとめて見ることができませんでした。これをテクノロジーのチカラを使い、一箇所にまとめて閲覧できるようにしています。

動画の制作者は世界各国のクリエイターですが、CGMのように誰でも動画をポストできるのではなく、我々運営サイドが動画を選び公開することでクオリティを担保しています。スタートした2015年当時から一貫してクリエイターと丁寧なコミュニケーションをとりながら動画をNobodySurfで紹介しています。最近ではクリエイター側から「NobodySurfに動画を上げてほしい」という依頼も来るようになりました。加えて2019年からはオリジナル作品も公開し始めています。

意外に思われるかもしれませんが、実はサーフィンの動画がまとまっているアプリは世界に2つしかありません。ひとつは「ワールド・サーフ・リーグ (WSL:World Surf League) で、もうひとつがNobodySurfなのです。

WSLは大会のライブ中継を行いスポーツ競技としてのサーフィンを扱っています。一方、NobodySurfはコンテスト形式ではない「フリーサーフィン」と呼ばれる自由に波乗りを楽しんでいる様子を撮影した動画作品をまとめて扱っている世界で唯一のアプリです。求めている人は世界中にたくさんいるはずなのに世界中どこを探しても存在しなかったので、自分たちでつくろうと思いスタートしました。

–フリーサーフィンのまとめアプリが無かったというのが意外です。このニッチなサービスを始めたキッカケはどのようなものですか?

岡田:NobodySurfを運営するリブルーを始める2014年まで13年間、伊藤忠商事で働いていました。後半の6年間は当時のグループ会社であるエキサイトに出向してiPhone黎明期から新規事業メンバーとしてアプリやサービスを作り、運営しておりました。もともとインターネットやアプリの「国境を超えていく」チカラが大好きで、自分で会社を起こす際にも「スマホ×インターネットで世界中の人達がアクセスできるもの」を作ろうと思っていました。

ただ、同時にインターネットの課題も感じていました。それは特に動画において、実際に見るまで良し悪しを判断できない大量のコンテンツが氾濫しており、探しづらくなってしまっている点です。特にニッチなものであればあるほど埋もれてしまう。せっかくのインターネットの利点が、情報過多により埋もれてしまうのはもったいない。

そこで、ニッチ分野の動画とそれを求める世界中のユーザーをつなげる作業が必要ではないかと考え、目を付けたのが個人的にも大好きだったサーフィンです。世界のサーフィン人口は3,000万人程と言われていますが、各地域レベルで見るとニッチに見えたとしても世界の野球人口と同じくらいなのです。各地域に点在している熱量の高いコミュニティをテクノロジーの力を使ってつなげることができれば、世界中のクリエイターとサーファーがハッピーになるのではと考えました。

最初から世界を相手に進めていくことを前提としていたので無国籍・ユニバーサルに世界中の誰でも簡単に利用できる動画中心・テキスト少なめのサーフィン動画アプリNobodySurfを作りました。

–既に世界中のファンを獲得しているNobodySurfですが、どのようなコメントがユーザーから寄せられていますか?

岡田:現在アプリはiPhone/iPad、Android、Apple TVで展開しており、Instagramは26万人、Facebookは40万人フォロワーがいます。フォロワーの85%は海外です。

嬉しいのはアプリの評価が5段階中4.7であることです。世界100カ国から「このような動画アプリを待っていた!」と嬉しい声が集まってきています。アマチュアもトップサーファーもスーパースターも、ロングボード、ショートボード、川で行うリバーサーフィンなどあらゆるジャンルや世代を超えて、サーフィン好きから喜びの声をいただけるのは本当にありがたいです。

また、サーフ動画クリエイターからも、他のサービスに公開しても再生数がいかないものが、NobodySurfだと10倍以上の視聴数があり、多くの人に見てもらえるのが嬉しいという声も頂いています。

先日出張でアメリカ・カリフォルニアに行った際も、NobodySurfが既に浸透していると感じました。サーフィンの本場・カリフォルニアのサーファーから「ありがとう」と言われて、こちらも「ありがとう」と。世界中のサーフィン好きの人達の「ありがとう」に囲まれています。

リリース当初から世界基準でやっていこうと考え、特定の国の言葉やテキストに頼らないようにし、我々運営自体も黒子に徹して仕事をしていることも、グローバルに浸透していくためには必要だったことだと思っています。NobodySurfは作品が主役で、作品を作る人やサーフィンをする方々こそが大事なので、運営側は徹底的にニュートラル且つユニバーサルな環境を作ることに徹しています。

熱狂をテクノロジーのチカラでつなげていく

–「失敗」の定義を教えてください。スタートアップとしての失敗をどのように定義していますか?

岡田:「続けること」が大事です。続けるってことを決める、やめないってことを決める。失敗は、続けるのを諦めたときだと考えております。また、逆説的かもしれませんが、続けるためには変化し続けることも必要だと思っています。私の原体験としては子供の頃にフランスのアメリカン・スクールに通っていたことも大きいです。様々な国籍・バックグラウンドの児童たちが学校に集まっていました。そこで「人と違うことは楽しい」という感覚を得られたのです。

いままで知らなかったカルチャーに触れるのはとてもワクワクしますよね?その原体験から、「変化率が高い方」を求めて動いています。そのように動くと「失敗」は失敗ではなくなり、経験になっていきます。

–今後の展望を教えてください。

岡田:いまは世界中のサーフィン好きの方々が世界中のサーフスポットで撮影された映像を見ながら「精神的な移動」を楽しむ動画アプリとしてのNobodySurfを作っていますが、その先には憧れのサーフスポットに行ってみたい・憧れのサーファーの板が欲しいなど、「物理的な移動」が起きると思っています。 いまNobodySurfを通して起きている小規模な熱狂をテクノロジーのチカラでつなげていき、より大きな熱狂へとつなげていきたいと考えています。

Interview & Text:西村真里子
Edit:市來孝人