「GRASSHOPPER」第1期デモデイ振り返り 11社が登壇したピッチコンテストの内容は?

2019.05.28

第2期も開催準備中のメンタリングプログラム「GRASSHOPPER」。3月27日(水)には電通ホールにて、第1期デモデイ「GRASSHOPPER DAY 2019 SPRING」が開催された。

第1期のプログラムでは、外部メンターや電通プロデューサーによるメンタリングを三ヶ月実施。また、電通のネットワークを活かした協業先の開拓、エージェンシーとしてのノウハウ蓄積を活かしたリブランディングなどの支援を実施。

そして「GRASSHOPPER」第1期のプログラムの成果発表の場となったのが、この「GRASSHOPPER DAY 2019 SPRING」。当日は第1期採択企業によるコンテストを実施。(ピッチ企業:WithTravel/現atta、エアロネクスト、エドガ、Ginco、クラウドリアルティ、Super Duper、Studio、ノバルス、ペイミー、ムスカ、Laboratik ※日本語表記五十音順)。当記事では、登壇順にピッチ内容をダイジェストでお届けする。

つくっているのは「0回目の本番」
株式会社エドガ CEO米本大河

VR技術を用いた研修や教育コンテンツの開発を行う株式会社エドガ。 GRASSHOPPERメンター・樋口景一らのチームとともに開発した「0回目の本番」という言葉が印象的なピッチだった。

これは「ぶっつけ本番を無くし、0回目の本番をVRで」行うという考え方で、「0回目の本番」として事前の失敗経験(練習)を提供するExperienceVRの価値を訴えた。起業に挑戦したものの失敗したという過去の実体験から学んだ、「失敗→挑戦」を繰り返すことの重要性にも触れた。

さらに、このデモデイのピッチも実際に0回目の本番として練習したといい、その様子を会場で披露。アバターを通しての「本番」は、観客の様子なども含め、登壇時の舞台から味わう雰囲気が再現されていた。

アイデアを誰でもカタチに
STUDIO株式会社 CEO兼デザインチーフ 石井穣

コーディング不要・自由自在にWebサイトを作れるデザインツールを開発する、STUDIO株式会社。Webサイトが急増する中で、20年前から一切変わっていないという制作フローを変えるべく、完全分離していたWebサイトの「デザイン」と「開発」を一つにするプロダクト・STUDIOを紹介した。

世界82か国以上で利用されており、業界のトッププレイヤーにも使われ始めているとのこと。今回は、「GRASSHOPPER DAY」のイベントサイトをその場で制作。画像もフォントも自由にコントロールでき、レイアウトも自由に。さらにワンクリックで公開できる、という機能がよくわかるデモとなった。

「Webサイトを作る上で無駄な作業は全て自動化し、人間が本来発揮するべきクリエイティブに集中できる環境を提供することで、アイデアを誰でもカタチにできる世界を目指す」と訴えた。

自分で探さなくてよい、待つだけ旅行予約サービス
株式会社 WithTravel (現・株式会社atta)代表取締役社長兼CEO 春山佳久

旅行者向けの宿泊施設検索を軸にトラベルレコメンドエンジンを提供する株式会社 WithTravel。プレゼンの冒頭、社名を株式会社attaに、サービス名を「WithTravel」から「atta」に変更すると発表した(4/1より)。

「atta」は旅行の計画や手配における問題を解決するべく、膨大な旅行のビッグデータ(フライト情報や宿泊情報や旅行者情報など)とAIを活用し、旅行者の代わりに最適な航空チケットやホテルを探し続けるサービス。旅行者の手間の解消とともに、自分では気づかなかった旅の発見が提供される。

ビッグデータ・AIを通して、旅行者の代わりに探し続け、「あった」とおすすめすることを示す「atta」というネーミングは、GRASSHOPPERのメンタリングを通して考案したものという点も明かされた。

経済のめぐりを変えていく
株式会社Ginco CEO 森川夢佑斗

ブロックチェーン技術で金融領域のアップデートを行う株式会社Ginco。「バブル崩壊以降の平成に生まれ、経済の摩擦と停滞を感じ、解消したいと思った」と、冒頭で思いを語った。

Gincoは、GRASSHOPPERでのメンタリングを通して「経済のめぐりを変えていく。」というビジョンを打ち出している。お金や流通を大きく変える手段として、ブロックチェーンを活用してお金の不自由をなくす事業を展開する。

現状のブロックチェーンの課題を、事業者インフラと生活者のインターフェイスの未整備にあると捉える。事業者に対するインフラとしてGinco Nodes(=ブロックチェーンを活用したサービス開発のサポート)を、そして生活者に対するインターフェイスとして、Ginco Wallet(=ブロックチェーンの利活用をサポート)を紹介した。

「チームが見える」を当たり前に、簡単に
Laboratik株式会社 Founder/CEO 三浦豊史

チャットコミュニケーション解析ツール「We.」を開発するLaboratik株式会社。「働くを進化させる」をミッションに掲げ、働き方改革以降も存在する「働くにまつわる負」を解消するべく、コミュニケーション×ピープルアナリティクスに軸にしたプロダクトを開発。

三浦氏が以前在籍していたGoogleで「効果的かつ公正な解決策」であるピープルアナリティクス(=組織や人事をデータ分析すること)に出合い、「人の感情に左右されずにフラットに働き方や人事評価を決められる」点に魅力を感じたという。

1500万件のデータをもとに、組織のコミュニケーションをスコアリングして見える化、チームのエンゲージメント把握が可能に。人の感情に左右されないフラットな人事評価制度の普及を目指している。

空に産業革命を
株式会社エアロネクスト 代表取締役CEO 田路圭輔

 
ドローンの重心制御技術「4D Gravity®︎」を手がける株式会社エアロネクストは、自動車前提社会の発達になぞらえながら、今後訪れるドローン前提社会を紹介。ドローン前提社会の前提は、「機体の信頼性の重要性」だと訴えた。

そんなエアロネクストが発明したのが、ドローンの軸がぶれない「4D Gravity ®︎/ 重心制御技術」。この技術を様々な産業に応用していくことで、新しい空域の経済化を目指す。秋には、座席が傾かない空飛ぶタクシー「Next MOBILITY™️」も発表すると言及。

ピッチの最後には、GRASSHOPPERのプログラムを通じて完成させたコーポレートステートメントをまとめた1分程度の映像を上映。「頭上をドローンが飛び交っても、誰も気にせず安心して毎日を過ごせるようにすること。」「エアロネクストは、様々なプレーヤーと協力し、空に産業革命を起こすことをビジョンに掲げ、そのための課題を技術で解決するテクノロジースタートアップです。」などといったメッセージを紹介した。

世界中どこにいても最高の“食体験”を
株式会社Super Duper 代表取締役 鈴木知行

世界中の旅行者が必ず行う「食べる」という行為にフォーカスし、食事を介して胃袋とコミュニケーションするシステムを開発するSuper Duper。

日本に来た観光客が、言語の壁により日本食を十分に楽しみきれていない現状を解消するべく、チャット型多言語レストランメニュー「Satisfood」を開発。AIチャットで観光客の要望に合わせたメニューを提案するサービスだ。

ミシュラン星付き店の接客パターンをプログラミングしていたり、ハラールやベジタリアンなど食の多様性にも対応させ、世界中の人の食の体験の価値向上を目指している。電通と組みビール会社や不動産、地方紙との取り組みも行っていくことが語られた。

IoTの問題をバッテリーで解く
ノバルス株式会社 CMO 山中享

人はいつでもバッテリーの残量を気にしている。今後IoT化が進み、バッテリーの数が増えたとき、人はバッテリーをどう管理すればいいか?そんな問いに答えるのが、ノバルスが開発するコネクテッドバッテリー「MaBeee」。

電池自体がネットに繋がることで、遠隔でのエネルギー補充が可能に。通信できるバッテリーであらゆるものをIoT製品化することで、スマホとつながる子供のおもちゃ、離れて暮らす高齢者の見守りプロダクト、身の回りの電池製品の電力モニタリング、医療や農業への活用など、あらゆる課題解決を低コストで実現できると語った。

また、MaBeeeを活用することによりIoT製品の開発が容易になるという点も。IoT開発において一番難しい部分が「電源と無線」というが、MaBeeeを活用することで、技適不要・専用開発不要・開発コストは従来の1/5以下になるというメリットがあるとのことだ。

未来価値の交換プラットフォーム
株式会社クラウドリアルティ 代表取締役 鬼頭武嗣

日本の不動産マーケットではコストや審査基準のハードルから、資産調達が非常に難しいという問題がある。そこでクラウドリアルティでは、すべての個人が自由に価値交換をできる世界の実現を目指し、様々な取り組みを行っている。

例えば、プロジェクトレイヤーでは、従来の金融機関から融資がかなわなかった、古い建物を活かした旅館づくりや保育園や飲食店をつくるための資金調達を実現。様々な国の様々な起案者・出資者によるエコシステムをつくっている。

また、こうしたプロジェクトで価値交換するために必要な投資銀行機能をあらゆる人に低コストで提供する仕組みも提供。内閣府との連携や、国際金融外交にも取り組み、全く新しい金融の仕組みづくりに挑戦しているという。

「給料をもらう人と払う人の間に、やさしさを。」
株式会社ペイミー代表取締役 後藤道輝

給料をもらう人と払う人の間に「優しさを」と語った、給料即日払いサービス「Payme」を提供するペイミー。初めてアルバイトをした時に、働いてから給料日までの期間が長くお金がなくて困ったという後藤氏の原体験をもとに、50年間変わっていない給料の支払い体系を変える必要性を訴えた。

働く側が給料を好きな時にもらえるだけではなく、給料を払う企業側にも、求人応募数向上、定着率向上、業務の削減というメリットがあるため、導入企業も200社を突破し増え続けているという。

今後、勤務実績を即時反映させた「PaymeCard」の発行なども構想し、ミレニアル世代の金融機関としてメガバンクに負けない金融機関を目指したいと力強く語った。

イエバエを活用し「世界の飢餓をなくす。」
株式会社ムスカ 代表取締役 暫定CEO 流郷綾乃

11社の最後に登場したのは、昆虫テクノロジー企業のムスカ。ムスカでは、45年・1100世代選別交配した、サラブレット化されたイエバエの種を保有している。生ゴミ・畜産糞尿にイエバエの卵を入れると飼料と肥料を生み出すという、ゴミを資源に変えるビジネスだ。

世界の昆虫企業と比較しても生産効率で優位性があるといい、2019年秋からは海外進出に向けた資金調達も始める。また、クリエイティブデザイン面においてGRASSHOPPERがサポートしている点も言及。「今、チームだと本当に思っているので今後ともよろしくお願いします」と流郷氏は語った。

最後に、ムスカの事業はSDGs の17の項目中14項目に該当しており、今の地球が抱える様々な問題を解決できるポテンシャルがある。だからこそこの事業を世界に広めていきたい、その仲間を増やしていきたいと語り、プレゼンを締めくくった。

審査結果

グランプリはムスカ、2位:ペイミー、3位:STUDIO、4位:エアロネクスト、5位:ノバルスという結果となった。

ムスカ 流郷氏にデモデイ終了後に話を聞くと「私が広報出身ということもあり、ムスカはPRやブランディングに注力しています。GRASSHOPPERはブランディングやPRを見ていただけるという点で、参加させていただきました」と参加の理由を説明。「私たちが扱っているハエは、そもそも世の中からネガティブなイメージを持たれがちです。そこを、どう再定義できるかによって今後の昆虫産業の広がりが変わってきますし、それによって産業全体を牽引できると思っています」と今後の飛躍を誓った。

デモデイの最後に、GRASSHOPPER代表の月村寛之は、採択企業、メンター、審査員、スタッフへの感謝を述べるとともに「GRASSHOPPERを起点として、スタートアップにとっての良い土壌を作り、イノベーターのエコシステムにエージェンシーならではの貢献をしたいと思っています」と締めくくった。

Report:長島龍大