家入一真、中村洋基、樋口景一、深津貴之らが語る「GRASSHOPPER」流メンタリングの特徴とは?

2019.05.08

第2期について、近日概要発表予定のメンタリングプログラム「GRASSHOPPER」。3月27日(水)には電通ホールにて、「GRASSHOPPER」第1期のプログラムの成果発表の場となるデモデイ「GRASSHOPPER DAY 2019 SPRING」が開催された。 会場には、各業界で活躍するメンターや審査員が集結。イベントは、メンターらによるトークセッションで幕を開け、GRASSHOPPER誕生の背景とプログラムの秘話が語られた。

登壇したのは家入一真(CAMPFIRE)、中村洋基(PARTY)樋口景一(電通)、深津貴之(THE GUILD)、モデレーターは月村寛之(電通)、西村真里子(HEART CATCH)。(※五十音順)

「一番多いのは人生相談」心で寄り添うメンタリングの重要性

GRASSHOPPERの誕生のきっかけは、今から3年前。深津のツイートをきっかけに、家入、中村が集い、GRASSHOPPERの元となる構想がスタート。時を同じくして、中村と月村が出会う。当時、海外やミドル・レイターのスタートアップへの投資が中心だった電通。その電通を、シード・アーリーのスタートアップとの出合いの場であり、新たなビジネスが生まれる装置としようと立ち上がったのだ。

第1期のプログラムは、60社以上の応募から選出された、11社の採択企業とともに始動。約3ヶ月にわたって実施されたGRASSHOPPERのメンタリングプログラムでは、全体講義や、それぞれの企業が抱える課題に応える個別メンタリングが用意された。セッションでは、広告代理店のクリエイターによる異色のメンタリング秘話や、各業界を代表するメンターが伝えた、成長するスタートアップに必要な心構えが語られた。

樋口:電通のクリエーティブとしてメンタリングしたのは、概念の定義と転換の部分。各社、技術と壮大なビジョンがあるが、何をコアとして戦っていくのか。様々な議論の中でバックグラウンドにある思想を聴きながら、言語化するお手伝いをしました。言語化という作業はないがしろにされがちですが、一度言葉にすることで、どんな規模感のどんな場所で戦うかというフィールドが決まります。逆に、言語化・概念化が緩いまま進んでしまうと「本当にこんな小さな場で戦うのでよかったんだっけ?」とか「本当はもっとこんな可能性があったはずなのに」といった事態に陥ります。各社に備わっている可能性を炙り出し言語化することで、勝負するフィールドを一緒に探りながらメンタリングをしていきました。

家入はこれまで100社以上への投資やメンタリングを経験する中で、意外な側面からスタートアップをサポートしてきたと話した。

家入:起業家自身が寝る間も惜しんで真剣に向き合っている事業に対して、メンターとしてアドバイスできることは限られている。実は、圧倒的に「人生相談に乗る」というお手伝いが多いです。最近、起業家のメンタルヘルスと向き合う「エスコート」というサービスをcotreeさんと始めました。これまでは意外と置いてきぼりにされていた問題でしたが、実は起業家は鬱になるリスクが非常に高いんです。起業家のカリスマ性や尖り方は、そういった心の問題と紙一重だったりします。悪化すると、周囲や自分自身を傷つけたりして、ビジネスもダメになるというケースがよくあるので、人生相談に乗ることが多いのです。

その点、GRASSHOPPERのメンタリングプログラムでは、採択企業11社各社に電通のプロデューサーがひとりずつつき、ビジネス面でも心理的な面でも寄り添うことをミッションとした。

月村:GRASSHOPPERが、参加するスタートアップの方にとって身も心も預けられる存在になれるための体制づくりを目指しました。そのために、各社にひとりずつ電通社内のプロデューサーをつけ、担当する企業に寄り添い続けました。悩みを聞き出すことに始まり、さらには、電通が抱える7000社の取引先を生かした協業提案といったビジネス面でのサポートまで含め、3ヶ月間密に寄り添う。プログラムが終わる頃には別れたくないと言わせるぐらいの関係性を築くことをミッションにしました。

中村:採択企業11社全体を俯瞰して、共通した課題だったのが、1つはマーケティング。2つめはUI/UXです。もちろん中には、各省庁・国との折衝や資本政策に課題感を感じている企業もありましたが、基本はその2つ。なので、僕はマーケティングを中心にメンタリングしました。

深津は、そんな多くの企業が課題にしているUI/UXのプロフェッショナルとして、講義を担当。スタートアップがUI/UXを考える上での心構えについて語った。

深津:「アプリの中の決済ボタンが点滅して動く」といった、ひとつのギミックにエネルギーを使っても、企業や世の中の問題が解決することはほぼありません。重要なのは、短期のり上げやKPIより根源的な、末長く人が使うもの・愛されるものを作れば、一番儲かるということを信じられるかどうかです。短期的に人をだまくらかすようなキャンペーンやデザインでは、うまくいきません。素直に、長く使われるものが一番儲かると信じてもらう、それが世の中のUI/UXをよくするために一番必要なことです。なので、そもそもこの企業課題を解決するためにアプリが必要なんだっけ?といったところから議論が始まることもあります。

7000社のネットワークを生かした「電通人」ならではのメンタリングを

これまで、レイトステージのスタートアップや海外への投資が多かった電通。シード・アーリー期のスタートアップを支援するGRASSHOPPERは、電通として・広告代理店として、そのポテンシャルはどこにあるのか。電通社員や投資家、それぞれの立場から語られた。

樋口:電通は、国内だけでも6000社以上の企業との付き合いがあり、新たな技術やサービスと出会う際、ものすごい量の企業とのつながりを考える習性、ビジネスが生まれるシミュレーションを頭の中で行う習慣があります。なので、メンタリングをする際も、その企業が今この瞬間に単体でお金になるかということはもちろんですが、それよりも、より大きな繋がりの中でどうスケールしうるのか、ということで捉えます。別の企業やメディアやコンテンツホルダーも含めて存在する、より大きなネットワークの中でいろんな人を巻き込んで個有のポテンシャルが大きくなっていくことを見据えています。

中村:スタートアップが一定の成長ラインを超え、キャズムを超えたい・CMを打ちたいと思った時に、お世話になるのが電通です。そんな時に、たとえばすでに出資をしていたり早い段階から付き合いがあるなど、そのスタートアップが伸びることが電通の得に繋がっているという盟約関係があったほうが、お互いを本気で伸ばし合えると思います。なので、シード・アーリーのフェーズから、電通とスタートアップの間に関係を作っておくのは非常に意味があります。

家入:エンジェルラウンドの魅力は、「事業」より「人」にあります。その事業の未来は誰にもわからないので、そのリスクを持って起業しようとする起業家やチームにどれだけ惚れ込むか。なので、投資は、起業家が描こうとしている世界の物語に参加する感覚で、株主になるというよりは、参加費を払うイメージ。その点、電通はクライアントとともに、実現したい世界に向けて物語を紡いでいく会社です。そんな物語を作る会社が、スタートアップにシード・アーリーのフェーズから並走するのは意義があると思います。

深津:電通は数多くの新規事業を立ち上げています。たとえば、新規事業を始める際に、シードのスタートアップを巻き込んでいくのはどうでしょうか。シードのスタートアップには、自分事として活躍してもらいながら、電通側は株を持ち、持ち前の大人力やつなぎ力でサポートしていくといったシナジーが生まれると楽しそうです。

新しいアイデアは「カオス」や「溜まり場」から生まれる

セッションも終盤にさしかかり、GRASSHOPPER第2期の実施を見据え、各メンターが、今後のGRASSHOPPERのあるべき姿について、「コミュニティ」や「プログラム」などの観点から語った。

家入:新しいものや次世代のヒーローは「カオス」から生まれると信じています。GRASSHOPPERも、継続していくなかでコミュニティが形成されていくと思いますが、いかにその「カオス」を作り出すかという視点からは、イベントや集まりもあまり整然とした綺麗なものじゃない方がいいかもしれないです。

深津:イベントもいいですが、スタートアップがごちゃっと集まれる溜まり場を作って、1〜2年運営するのがよいと思います。メンタリングも、一点一点の点でやるとオートクチュールになりすぎてしまうので、それは授業としてキャスト配信にして、溜まり場を作る方へ注力してみるのはどうでしょうか。

樋口:採択されたスタートアップ企業が、普段接点のないようないろんなタイプの人やものの見方に会う機会を増やしたいです。アイデアは、ものすごく距離がある人やモノ同士が結び付くことで生まれるので、その企業がいる業界や市場と距離のある人・企業との出会いの場を作っていきたい。
また、こちらから各社さんの所に出かけていき、泥んこになっていろんな話をしながらメンタリングしていけるといいですね。

Report:長谷川きなみ