小笠原治、國光宏尚、手嶋浩己、廣澤太紀ら 投資家陣が語る「伸びるスタートアップ」の共通項とは?

2019.05.10

第2期について、近日概要発表予定のメンタリングプログラム「GRASSHOPPER」。3月27日(水)には電通ホールにて、「GRASSHOPPER」第1期のプログラムの成果発表の場となるデモデイ「GRASSHOPPER DAY 2019 SPRING」が開催された。当日はプログラムのメンターに加え、各業界で活躍する審査員が集結。異なるバックグラウンドの投資家が参加したトークセッションでは、伸びるスタートアップの見極め方や、大企業とスタートアップの理想的な関係性が語られた。

登壇したのは小笠原治氏(ABBALab)、國光宏尚氏(gumi)、手嶋浩己氏(XTech Ventures)、廣澤太紀氏(THE SEED)、モデレーターは、西村真里子(HEART CATCH/GRASSHOPPERメディア 編集長)。(※五十音順)

まず話題となったのは、ズバリ「成長するスタートアップの特徴」だ。

國光:一番重要なのはマーケットです。たとえば2007年頃は、スマホの登場ととともにソーシャルが伸びて、クラウドが出てきてという時代だったので、その周辺をやっておけば必ず伸びたんですよ。今の時代も、放っておいても自然と伸びる市場は存在するので、爆発的に伸びる市場の入り口にいることが大事だと思います。
伸びる市場を見極める際に重要なのは、世の中の反響とは切り離して、技術の数年後の姿をきちんと予測することです。技術は基本的に地味に伸びていくので、どの段階で使えるようになるかを見極めて、その上で良きタイミングで参入していくべきです。たとえば、今年はVRが爆発的にきて、ARは再来年、ブロックチェーンが今年ある程度使えるようになってきて、来年くる…といった感じで、タイミングを見定めることが大事です。

小笠原:これから「宇宙産業」を投資テーマの1つにしていく予定です。自分はシード・プレシードのスタートアップに、初期のレイヤーで投資するのが仕事なので、世の中的にはまだ早いなという印象のテーマを選ぶようにしています。宇宙でいうと、直近では、研究主体だった文科省から経産省に一部予算が移って商用での利活用領域が活発化したり、グローバルでの小型衛星の打ち上げだけでなく日本のスタートアップでも打ち上げが始まるなど、いいタイミングだと感じています。

手嶋:一つ目は、社会的に伸びるコンテクストにあっているかという点です。わざわざ逆風に立ち向かうのではなく、追い風の文脈に乗っていく。その追い風の時間軸も、1年などの短いものではなく、3年や5年といった長いスパンでの追い風であることが重要です。
二つ目は、その文脈と経営者の相性を見ています。「この事業なら、こんな人が向いてそう」といったような、事業領域によって相性があると思います。とはいえ、事業を進めるうちにその人自体が変わっていくケースもあるので、やりとりの中で、どれだけ深く考えているか、やり切りそうかということは見極めるようにしています。

廣澤:以前、クラウドワークスの吉田さんのお話で好きなものがあって、ある方がクラウドワークスに競合するサービスのFacebookページにいいね!をすると、吉田さんから個別のメッセージが飛んで来たという話がありました。競合サービスの投稿をチェックするほど事業に執着できる人ってなかなかいないと思うので、その執着心と継続できるエネルギーがある人に投資をしていきたいなと思います。

國光:あとは、マーケットの次に大事な視点は「採用力」です。採用力がないと、投資家も引っ張ってこれないし、事業提携も難しいはずです。逆に会社が小さい段階から、優秀な人をどんどん引っ張ってこられる経営者は、投資家からお金を集めるのも得意です。

手嶋:僕は「自分はその人の下で働けるかな」ということをイメージします。要するに、人を引き寄せられる力のある人の方がいいと思うんです。「この人の下では厳しいかな」とか「この人の下だったらやれそうな気がする」という感覚は大事にしています。

一方で、日本からユニコーン企業のような成功するスタートアップをより多く輩出するために、企業としてできることは何かという視点についても議論された。

手嶋:日本はマザーズに上場すること以外、現実的なイグジットの手段が薄いです。とはいえ、現状の投資ファンドの勢力図を鑑みると、電通のような大企業の場合、シードやアーリーではなく、レイターファンドで大きな投資をした方が、日本のスタートアップ業界の成長に貢献できると思います。

國光:シード・アーリーステージのためのファンドは溢れていて、各ファンドには圧倒的な経験値と能力が溜まっているので、そこに大企業は太刀打ちできないと思います。一方で、日本にはレイターステージの企業に巨額投資できる会社は少ないので、そういったファンドを作るか、見極めのために他のファンドにLP出資するのがいいと思います。
海外で成功するスタートアップを作ることも大切です。そのためには、まずグローバル規模の大きな戦いを経験した人材が必要なのですが、日本は世界への挑戦の絶対量が少ない。たとえばシリコンバレーでは、Facebookで経験を積んだ人材が流動することで、UberやAirbnbが一気にグローバルシェアを取るまでに成長できたりします。その点、日本で今起こっている「モバイル決済」の戦いはヒリヒリします。こういったハイレベルな戦いがどんどん起こり、成功・失敗問わずグローバルの戦いに挑戦した人材が増えることで、日本のスタートアップ全体が強くなっていくと思います。

小笠原:ユニコーン企業を増やすために、我々投資家がお金を出すことは必要ですが、企業がやることはあまりないのではとも思います。一方で、クリエイティブ系の企業の例だと、最近POOLやオレンジ・アンド・パートナーズが、スマートロック事業のtsumugとクリエイティブ面で提携をして株をもらうという取り組みをしていて、興味深いですね。

廣澤:ユニコーンになることが、目標のひとつに入るものではないなと思うので、そもそもユニコーン企業が出てこなくてもいいと思っています。それよりも、THE SEEDとしては若い起業家へ投資しているので、そのスタートアップがIPOできる数字になる事業なのかという点と、経営者がその段階まで成長するのを自分が支えられるかという点にフォーカスするべきだと思っています。

最後には、クリエイティブ力や7000社以上の企業とのコネクションを強みにしたプログラムを展開している「GRASSHOPPER」を運営する電通に期待することについても提言がなされた。

國光:シンプルに、レイターファンドを立ち上げて、レイターステージの会社に10億以上をどんと出すのがいいと思います。

小笠原:大きな資金を利用して求心力を持つことで、スタートアップに期待されるようになることが一番だと思います。まず投資をして、成長してきた企業に対してクリエイティブや、クライアントとの結びつけをするといった階段状のサポートがいいと思います。
とはいえ、たとえば、電通の方を2年間無償で派遣してもらえるといったようなサポートもぜひやっていただきたいですよね。LINEの現社長の出澤剛さんも、元をたどれば生命保険会社からの出向ですよね。

手嶋:クリエイティブ面や他企業とのつながりといった電通のリソースがありますよ、というアプローチの場合、レイターステージの成熟した経営者と組むことが、スタートアップのためにもなると思います。というのも、経営者が若い段階で電通の人と会うと、クリエイティブ面のサポートがすべてだと誤認してしまったり、電通側も相手の経営者にとって何が重要なのか分からないまま接してしまい、両者にメリットが生まれません。なので、クリエイティブや電通の仕事観を理解していて、いろんな道具を使いこなせるようになって、自分が電通の助けが必要だなと思うタイミングで相談できるような、ある程度まで成熟した経営者・起業家側と電通が組むといいシナジーが生まれる予感がします。

多忙な登壇各位が東京のスタートアップイベントで一堂に会すること自体、とても珍しい中、成長するスタートアップについての視点、そしてGRASSHOPPER自体への提言をもらえたことが貴重であった。今後、この視点を踏まえてどのように成長するスタートアップを生み出す仕組みを作るのか?運営サイドもポジティブなプレッシャーを浴びた一日となった。

Report:長谷川きなみ & 西村真里子