エストニア最大のテックカンファレンス「Latitude59」日本&現地企業のセッションで共感されたキーワードとは?

2019.06.18

「Latitude59」は エストニアの首都タリンにて開催されるテクノロジーカンファレンスであり、エストニア最大のスタートアップイベント。2019年は世界20ヶ国から150社以上のスタートアップ企業、投資家、ジャーナリストを含む約2,500人の参加者が集まった。

なぜエストニアなのか?

人口当たりのスタートアップ企業の数がヨーロッパで最も多く、世界最先端の電子国家であるエストニアにおいて、近年このカンファレンスの注目度が増している。

エストニアを象徴する制度がe-Residencyだ。これは全世界の人々がエストニアの電子国民となることを可能とするもの。2019年時点で世界の登録者は5万人を超え、日本からも約2,500人のe-Resident(電子国民)が誕生。安倍晋三首相もe-Residentのカードを贈呈されたことが有名だ。

このe-Residencyを使うことで、日本にいながらオンラインでエストニアに法人登記することが可能であり、EU圏を中心にグローバルマーケットでビジネス展開が可能となる。オンライン登録の所要時間が20分ほど、その後、大使館に取りに行く際軽いレクチャーを受けるだけで取得できることが魅力だ。

「Latitude59」で目立つ国や自治体のブース

「Latitude59」に出展したスタートアップのブースは投資家との商談で盛り上がりを見せていた。商談数は2日間で2,000を超えるという。

また国や地方自治体のブースも目立つ。オランダなど、ネクストエストニアともいうべき国が自国のスタートアップをアピール。日本からは福岡市が大型ブースを構え、存在感を示していた。国のバックアップを得て、イノベーションのエコシステムを構築する潮流が見てとれる。

カンファレンスのプログラムは、4つのステージで同時進行。エストニア大統領のケルスティ・カリユライド氏のキーノートにはじまり、政府のデジタル政策の方向性やイノベーションの潮流をヨーロッパのトップランナーたちが語った。いずれもオープンマインド(利他主義)とプロトタイピング思考、そしてホラクラシー政府(上下より水平の関係を軸とした政府)としての行政の在り方がベースとなるディスカッションとなっていた。

その中で筆者は、Biz-Devのディスカッションの場として「Official Side Event」を担当させてもらった。日本の未来創造企業「Pronoia Group」とエストニアに本拠地を置くブロックチェーン企業「blockhive」共催の「latitude59」オフィシャルイベントだ。元GoogleのHead of leadership development ピョートル・グヂバチ氏(Pronoia Group CEO)と、エストニア政府のアドバイザー日下光氏(blockhive Co-founder)、そしてゲストにSkype創業者 ジャーン・タリン氏を迎えたもの。

ここではエストニア企業の人材不足、日本企業の製造業からサービス業への移行およびイノベーションを起こす環境といった、エストニアと日本の両国が抱える問題についてディスカッション。課題は違えど「企業の文化創り」が根本的に必要であるとの最終結論に至った。

具体的なキーワードとしては、「利他主義」「心理的安全性の確保」「残酷なほどの実直さ」「START UP WITH LOVE(情熱)」といったものが登場。これらのキーワードに関しては、オーディエンスも非常に共感を持っていた印象を受けた。

Latitude59の会場のみならずタリンの街中でもこのようなイベントが行われており、改めて行政とのティール(信頼に基づく、生命体のような結びつき)なつながりに感心する。

AI時代、求められる判断力(Decision-Making)

「Latitude59」内プログラムの中で筆者が最も注目したのは2日目の最終AGENDA「Democracy, Tech and Media」だ。ヨーロッパの放送協会、AI有識者(登壇:Snackable AI CEO & Founder Mari Joller氏、EU Scream Founder and Editor James Kanter氏、European Commission Former advisor Daniel Knapp氏、Interlake CEO & Co-founder Sven Slazenger氏)をむかえたこのディスカッションでは、情報統制やフェイクニュースなどに代表されるメディアの信憑性と、SNSによる情報量と質の混在に関して議論がなされた。

発信する側の民主主義に根ざした(と思われる)情報に対して、受け手が自身の判断のもといかに正しく受け止めるか。仮にAIで制御して情報伝達を行ったとして、それを正しいものとして判断できるものなのか。手放しで信じていいものか。今後、人間としてのその判断力(Decision-Making)が求められる。改めて人間の教養、Creativityが問われると感じさせた。

それは情報の流通だけでなく、事業開発においても例外ではない。自身が、自社が、自国がどのようなDecision-Makingを行い、ビジネスをグロースさせていくのか。情報や事情に振り回されることのないエストニアの地で心に刺さる瞬間であった。

Latitude59 公式サイト

Report:片貝朋康
Edit:西村真里子・市來孝人