「健康をあたりまえに」ビジョンドリブンの企業はどのように事業戦略を立てるのか–BASE FOOD 橋本舜

2019.06.10

第2期の概要を近日発表予定のメンタリングプログラム「GRASSHOPPER」。当サイトでは、クリエイティブのチカラを実践しているイノベーターへの取材も行い、スタートアップとクリエイティブの関係性について探っていく。

今回は、先日約4億円の資金調達を実施した、完全栄養食のパスタやパンなど「BASE FOOD」を開発・販売するフードテック企業・ベースフード株式会社 代表取締役 橋本舜を取材。様々な健康食品がある中で、主食のイノベーションにこだわる理由や、ビジョンドリブンの企業戦略について聞いた。

一時的なブームではなく、サステナビリティを大事に

–まずは事業内容を教えてください。

橋本:弊社は「主食をイノベーションし、健康をあたりまえにする。」をミッションに掲げ、世界初となるパーフェクトフード化された主食を開発している会社です。

なぜ主食に目を向けたかというと、ほとんどの人がよく食べている主食を、美味しさそのまま・手軽さそのままに栄養バランスの良いものにすることができれば、先進国でファストフードを食べている人から途上国で主食しか食べられない人も含めより広く「健康」を当たり前にすることができると考えたからです。現在は、完全食のパン「BASE BREAD」とパスタ「BASE PASTA」を定期購買という習慣化しやすい形でお客様にお届けしています。

–完全栄養食としての主食に含まれる栄養素(ファクト)に関して詳しく教えてください。

橋本:簡単にいうと、栄養士さんが作る献立と同じ栄養バランスです。栄養士さんが給食などの献立をつくったり食事指導をする際の基準として、「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省策定)があるのですが、その基準にある日本人の1日に必要な約30種類の栄養素の3分の1(1食分)がBASE FOODに含まれています。

–昨今、スーパーフードやサラダやスムージーなど、体にいい食品を見かける機会が増えていますが、他の健康食品も意識していますか。

橋本:サラダやコールドプレスジュースは健康的ですが、健康志向の人や健康志向な時に取り入れるものです。もしハンバーガーやラーメンを食べても健康でいられれば、健康な人の数を増やすことができます。そういった人も含めた社会の健康のベースを作りたいと考えました。

また、売り方も少し異なります。従来の健康食品の多くはトレンドを作ってブームにして瞬間的に売り切るという方法をとっているため、代わる代わるトレンドが出ては消えている状態です。そのため創業当時の自分も含め、世の中の人は自分が健康でいるために何をすればいいか迷ってしまっている、と感じています。

そこでBASE FOODは一時的なブームは目的にせず、変わらないこと・サステナビリティを大事にし、長期間かけてお客様を積み上げていくサブスクリプション型の戦略をとっています。

–企業戦略を、そのままBASE FOODという名前に落とし込んでいるんですね。

橋本:はい、そうですね。もっと分かりやすい名前がいいんじゃないか?という議論もあり「パーフェクトフード」「ミラクルフード」「栄養士さんのパスタ」などといった他の名称も検討しましたが、最終的には「健康を当たり前にする」というビジョンに従い、個人の生活や幸せのベース・健康のベース・食事のベース・栄養のベースをつくる会社でありたいと考え、BASE FOODに決めました。

「健康は分かりにくい」という会社員時代の課題意識

–橋本さんは、昔から健康に対する関心が高かったのでしょうか?

橋本:むしろ逆でした。前職のIT企業に勤務していた頃は忙しかったので健康は気になるものの優先できず、特においしい食事や楽な食事を止められず、健康診断の結果は徐々に悪くなっていきました。

また周囲を見渡した時に、上司や友人も似たような状況であることに気づきました。MBAを取っている人や勉強熱心でリテラシーの高い人が、1日3回年間365日、100年近く続くであろう食事に関してなぜこれほど知識がない状態なのか、なぜ食事は諦めているのか。その歪みの根底にある「健康な食事の分かりにくさ」を簡単にしたいという思いから、今の事業をはじめました。

–今後、BASE FOODを世の中にスケールさせていくタイミングに関して、構想やイメージはありますか。

橋本:ガラケーからスマートフォンに移行することと同じだと考えています。スマートフォンが出てきた当初は、電話でインターネットが使えるというイノベーションの一方で、重い・電池持ちが悪い・値段が高いなどと、課題もたくさんありました。でもそれらを解決していくことでどんどんスマートフォンは改善し、いつの間にか大衆化しました。万人が認識している課題は解決できるんです。そしてそれがイノベーションの普及のあり方だと思っています。

BASE FOODも同じです。今までパスタを食べていた人は、「このパスタの麺にバランスよく栄養が入っていたらいいのに」なんてことは誰も思ってもいなかったので、そのような進化は5,000年以上ありませんでした。BASE FOODを出すことで、バランスよく栄養は入っていても、既存のパスタと比べてボソボソする・値段が高いなどの課題も出てきます。ですが、目に見える課題は解決できるので、それを解決することでイノベーションが普及していくんです。

事実ここ2年間改良を続け、BASE PASTAもBASE BREADも驚くほど美味しくなりました。これをやり続けている限り、BASE PASTAは栄養をとれるだけじゃなく、今までのパスタよりも美味しく簡単に食べられ、クールなものになっていき、そうなれば一気に爆発的に広がると思っています。そこに向けて地道に改善し続けています。

今はビジネスの発端が、ビジョンになっている時代

–BASE FOODのビジネスにおけるクリエイティブの重要性を教えてください。

橋本:ビジネスって左脳っぽくて、クリエイティブって右脳っぽいじゃないですか。ビジネスとビジョンも似たような関係だと思っています。高度経済成長期から今まではビジネスモデルありきでビジョンを組む時代でしたが、昨今はイーロン・マスクを象徴に、ビジネスの発端がビジョンになっている時代だと感じています。BASE FOODはまさにその典型ですが、僕はビジョンドリブンの企業は必然的にクリエイティブになると思っています。なぜかというと、ビジョンドリブンの会社は、自分たちのビジョンを商品やサービスを通してお客様やステークホルダーに伝え、共有することが重要であり、その媒介であるクリエイティブを大切にするからです。

BASE FOODも健康を当たり前にしたいというビジョンを掲げるからこそ、奇をてらっていることやダサいことはしないですし、食事の楽しみを大事にしていないようなデザインにはしません。結局、ビジョンがすべての起点であり、そのあとにビジネスモデルやバリューチェーンが存在するんです。

–将来的に目指す世界観を教えてください。

橋本:僕らは食品企業ではなく、栄養インフラ企業を目指しています。栄養バランスというのは万人に必要なものなので、社会インフラになるべきだと思っているのです。かといって、蛇口をひねってサプリメントドリンクが出てくるような世界観も望んでいないので、栄養バランスのいい主食を毎月届けています。

将来的には個人の健康診断結果と連動して、尿酸値が上がっている人にはそれを下げるような原材料を増やすなど、パーソナライズされた主食セットを届けたいと考えています。また「いつでもどこでも誰でも」ということがインフラの条件だとすると、例えばBASE FOOD会員であれば、外食時にラーメン屋の麺もBASE RAMENに変えることができるといったサービスが提供できる世界も目指したいです。

Interview & Text:長島龍大
Edit:市來孝人