大日方祐介が語る、ブロックチェーン領域における日本の特徴と「世界」へのチャンス

2019.06.10

5月30日木曜日、都内で開かれたイベントにて本田圭佑氏が新たなプロジェクトとしてブロックチェーン領域に特化したベンチャーキャピタルを立ち上げることが発表された。このVCの仕掛け人・大日方(おびなた)祐介を取材した。“Obi”の愛称で世界のブロックチェーン・コミュニティに名が知れ渡る大日方に、後編ではブロックチェーン領域における日本の特徴と、「世界」を見据える今後の展開について聞いた。

前編:ブロックチェーンは「世代として初めての世界的な波」–ファンド立ち上げで世界に挑戦する大日方祐介

海外に向けて「日本」を発信する必要性

—ブロックチェーン領域で日本の企業や開発者が戦っていくときに必要なことは何でしょうか。

大日方:グローバルで動いている業界なので、日本だけのコミュニティで動くのではなく、世界のコミュニティの中で存在感を出しながら何かしら開発や事業、投資をやっていくのが重要だと思っています。企業に限らず、この領域で取り組んでいるスタートアップやメディアなど、どのプレイヤーもそうです。

そうでなければ、世界のプレイヤーに取り残され日本だけで盛り上がって終わるのではないかということを危惧しています。例えば情報発信では、海外で議論されている英語の情報を日本語に翻訳して伝えてくれる人やコミュニティは多いですが、日本のことを英語や中国語にして海外に伝える人はほとんどいません。そのため、世界に対する日本の情報発信をやっていこうと思い去年ごろから海外のカンファレンスでの登壇を積極的にやり始めました。4月のEDCON(イーサリアム開発者会議の中でも世界最大規模の一つ)では、日本のコミュニティについてスピーチさせてもらったり、Vitalikとのパネルディスカッションに出させてもらって、日本の業界で盛り上がっていることを発信しました。

また、週1回ウィークリーニュースレターのような形で、日本でその週に起きたことを英語でまとめて発信することもやっています。これらをちゃんとやっていかなければ、世界のコミュニティの中で「日本って盛り上がってるっぽいけど、なんかよくわかんない」という感じでそのほか多くの業界のように終わってしまいますよね。

—やはり、海外からみると日本の情報は手に入りにくい。でも、何か盛り上がっているからこそ、状況を知りたいと思っている人は多いということでしょうか。

大日方:そうですね。とても多いと思います。韓国も日本と同じように世界からの関心が高い市場の一つですが、世界との関わりという意味では日本より進んでいますね。日本はブロックチェーンのことを取り上げてくださるメディアやイベントの機会は海外と比べても多いですが、言語の壁もあり、国内だけで盛り上がりがちな面もあると思います。

この領域は、シリコンバレーだけではなく世界中で色々な試行錯誤がものすごいスピードで行われています。その際の言語は英語ベースなので、その中でちゃんと情報発信をしたり、人間関係を作っていくのは非常に重要だと思います。

—ブロックチェーン領域に関して、日本はどういった点が強いのでしょうか。

大日方:ほかの国と比べても、日本はコア技術に本気で取り組もうとしている人たちが多いという印象です。LayerXの中村(龍矢)さんなどは世界の開発者コミュニティの中でも広く認知されてきていると言えるのではないでしょうか。

また、Plasma Groupという、Karl Floerschなどの有名な開発者が主宰するスケーラビリティ技術たちのオンライン会合があるのですが、これに先日初めてCryptoeconomics Labの落合(渉悟)君が参加していたりもして、世界のコミュニティで認識される開発者は日本からもちゃんと出てきつつあるなと思います。

一方、世界に比べても日本はクリプトへの理解度が高い人や触れたことのある人が多い市場なので、より何がマスに受け入れられるのかという社会実験思考で開発をするチームがもっといてもいいなとも思います。

世界に挑戦するため、スタートアップとしてベンチャーキャピタルを立ち上げる

—大日方さんが思う、ブロックチェーン領域におけるトップクラスの起業家人材はどのような人材ですか?

大日方:よく投資家目線で聞かれることがあるのですが、僕は自分自身のスタートアップという感覚で、ベンチャーキャピタルという事業領域に挑戦しています。なので、むしろいち起業家目線で世界を目指しています。上から評価するという感じではなく、同じ目線を持った仲間を世界中で探しているような感覚です。そういう人たちとの冒険を一緒に共有しながら、切磋琢磨しながら世界に挑戦したいと考えています。

そして、ブロックチェーンは日本にとっても世界を目指せるまたとないチャンスだと思っています。インターネット黎明期だと今のようにTwitterなどの伝達手段が無かったので、アメリカのベイエリアに情報も資本も蓄積し、結果今の「シリコンバレー」が出来上がりました。ゆえにタイムマシンモデルのようなことが出来たわけですが、同時にシリコンバレーとはなかなか追いつくことのできない差が生まれてしまいました。しかし今のブロックチェーン業界ではほぼリアルタイムに世界で起きていることがわかり、世界中どこのメンバーともすぐにやり取りができます。まだ、全てがシリコンバレーだけに集中しているわけではありません。だからこそ、日本の情報をもっと発信していく必要、グローバルのコミュニティの中でちゃんと存在感を出していく必要があるなと感じています。

一度きりの人生、本気で世界を目指したい

—今後の展望を教えてください。

大日方:僕がこの領域にかけて挑戦しようと思った理由でもあるのですが、日本人が世界と同じ標準を狙っていける領域がブロックチェーンだと思っています。なので、この領域を目指す人たちをどんどん増やしたいなと思っていますし、そういう人たちを今自分が立ち上げているベンチャーキャピタルを通して世界中で支援していきたいなと思います。

2019年5月末に発表したブロックチェーンファンドですが、僕とアメリカ人のパートナー、ギャレット・マクドナルドと共に立ち上げます。彼はビットコインのマイニングを13歳から始め、自身でもマイニングチップを開発する企業を運営していた技術者で、直近はベルリン拠点で東京電力や中部電力などと協業しているEnergy Web Foundationでトークン設計やブロックチェーンインフラ構築などをやっていました。そんな彼と、共同で立ち上げるのが本田圭佑さんらです。

彼らとやろうと思ったのも、初めから世界目線で挑戦したいというところがありました。本田さんはサッカー選手としても有名ですが、有名だからやりましょうというわけではなく、一人の日本人・人間・投資家として、彼ほど世界目線をもって、やるんだったら世界を目指そうよとピュアに思っている人はなかなかいないと思います。そこで最初に目線が合って、議論を重ねる中で一緒にやりましょうとなりました。

これまでのスタートアップの世界だと、アメリカをはじめとした世界中の優秀な起業家に日本の投資家が投資をできる理由はなかなか作るのが難しいものでした。でも世界の中でも日本に注目しているプレイヤーが多いブロックチェーン領域ではそのチャンスがある。だからこそ、僕は世界を思いっきり狙うことができると思っています。僕の野望は、この領域における世界トップクラスのベンチャーキャピタルを作り上げることです。

前編:ブロックチェーンは「世代として初めての世界的な波」–ファンド立ち上げで世界に挑戦する大日方祐介

Interview & Text:西村真里子
協力:CRYPTO TIMES 新井進悟