なぜ今、ブロックチェーンと他業界のコラボレーションが求められるのか–Quantstamp 小田啓氏に聞く

2019.08.07

6/8(土)9(日)、東京都内にて Quantstamp、NodeTokyo、Neutrino、HashHubが初中級者向けのブロックチェーンハッカソン 「DECRYPT TOKYO」を開催(イベントレポートはこちら)。

参加者・スポンサーともに非常に満足度の高かった本イベントが、どのようにして生まれたのか?そして、コミュニティーから始まるブロックチェーンとの接点づくりとは?主催者である、ブロックチェーン監査事業を行うスタートアップQuantstamp 小田啓に話を聞いた。

Photo by Taishi Masubuchi from Quantstamp

ブロックチェーンは触ったり作ったりすることで楽しさや発見がある

-日本においては「初」となる大型の初中級者向けブロックチェーンハッカソン「DECRYPT TOKYO」。企画したきっかけを教えてください。

日本のブロックチェーン業界において、新しくチャレンジしてくれる方を増やしたいと思ったからです。きっかけは、ブロックチェーンというワードに対して世の中がネガティブに捉えていると感じたこと。ブロックチェーンの面白さや可能性の大きさを、もっと多くの人にしっかりと伝えて、業界自体を盛り上げたいと思い、アクションを始めました。

-具体的にはどんなアクションから始めたのでしょうか?

まずは、将来の主役である学生に向けたミートアップを開催しました。でも、その中で感じたのは、ミートアップだけでブロックチェーンの魅力を伝えきるのは難しいということです。やはり、ブロックチェーンは触ったり作ったりすることで楽しさや発見があると思っています。そこで、そういった体験をしてもらう機会として「新しい人に魅力を伝えるためのハッカソン」をやりたいと考え始めました。

実施に向けてまず行ったのは、ブロックチェーンコミュニティの仲間への相談でした。「その考えはいいですね!」「参加したいです!」というポジティブなフィードバックが多かったので、本格的に開催する動きになっていきました。コミュニティ全体で盛り上げていきたいという機運があったのだと思います。

-具体的に実現するには協力者が欠かせません。主催者チームやスポンサーはどのように決まっていったのですか?

まずは、以前からとても仲が良く、かつブロックチェーンイベントの実施において素晴らしい実績のあるNodeTokyoの大日方(祐介)氏と元Neautrinoの服部(摩耶斗)氏に声をかけ、快く賛同してくれたことからチームが立ち上がっていきました。

Photo by Taishi Masubuchi from Quantstamp

スポンサーについては、今までの活動の中でつながってきたブロックチェーン業界の熱い方々にお願いをしました。「みんなフラットなカタチで、コミュニティイベントとして開催したい。コミュニティに新しい人が入ってくることはみんなにとってうれしいことだと思うので、それを一緒にやってくれませんか?」というお願いをしたところ、多くの企業や団体が乗ってくれました。

Photo by Taishi Masubuchi from Quantstamp

-実現に向けて動く中で、不安や困難に感じたことはありますか??

参加者を集めることに特に不安があったのですが、幸いなことに、当社には学生のインターンがいたり、大日方氏が以前から学生が多く参加するブロックチェーンコミュニティCryptAgeを運営していたり、それぞれの素晴らしいネットワークを使って告知をしてくれ、そのパワーが束になって100名を超える参加者を募ることができました。

Photo by Taishi Masubuchi from Quantstamp

グループ作りにおけるこだわり 最低一人は開発に造詣の深い人を

-初中級者が参加したハッカソンであるにもかかわらず、素晴らしいアウトプットの数々でした。そのために行った工夫などはありますか?

20グループほどに班分けしたのですが、各グループに最低でも1名はブロックチェーン開発に造詣の深いメンバーを入れました。参加者の感想としても、知見のあるメンバーがチームにいたことは非常によかった!と思ってもらえたようです。また、応募の時点でブロックチェーンの知見レベルを聞くようにしたところ、一般応募からもレベルの高い方が応募してくださいましたし、スポンサーメンバーの中からも多くの方に参加していただけたことで、チームのクオリティが担保できたと思います。

-イベントの感想や、今後の方針を教えてください。

Twitterなどで「参加してよかった」「すごく学べた」などとつぶやいてもらっているようで、「やってよかった」と心の底から思っています。また、参加者のみならず、スポンサーからも良いメッセージをもらっています。関わったすべての皆様のおかげですが、本当にレベルが高いイベントになったと自負しています。

Quantstampとしては、以前からも注力してきた将来のエンジニア・開発者の育成に向け、大学との連携やアクションに力を入れていきたいと思っています。また、他業界とコラボレーションが自然と生まれていく環境を、当社が主体となって作っていくことにも重点を置きたいと考えています。今回開催したハッカソンもそうですが、他業界で活躍している方とブロックチェーンをどのように繋ぎ合わせ、関わるきっかけの場を作り出すかは、ブロックチェーン業界を盛り上げるために絶対的に必要なことだと思います。

Quantstampでは、オウンドメディアやTwitter、そして今回機会を頂いたGRASSHOPPERさんなどメディア取材を通し、「なぜ今、私たちがブロックチェーンに熱狂しているのか」という「想い」ベースの発信をあらゆる角度で行っています。技術的なアップデートの発信はもちろんですが、こういった「想い」「ビジョン」ベースの発信を通して、ブロックチェーンコミュニティのみに閉じこもるのでなく、多種多様な皆様とコラボレーションする機会を積極的に作っていきたいです。

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この素晴らしいイベントがなぜ実現し、なぜ成功に終わったか?そのポイントは二つだと思う。

一つは「コミュニティ」。まず、このイベントを生んだのは、ブロックチェーン業界に対する小田氏の情熱。そしてその情熱に呼応したのがブロックチェーンのコミュニティだった。そのコミュニティがもつオープンさや柔軟さが、このようなアイディアを実現に導いた。

対比されるべくは、既存の「企業」や「仕事」などのクッキリした組織や利害の概念だと思う。主催者チームのメンバーは様々な企業に所属しているが、すばらしいワンチームであった。そしてスポンサーや参加者を含めイベント全体に関わった人々全員がオープンでフラットな関係にあったことが印象的だった。。

きっと、その時代に最もフィットしたイベントというのは、必然的に挑戦的な内容になってくるのだろう。その時に最も必要なものは豊富な予算ではなく、同じ想いでつながっている人同士のつながり=「コミュニティ」だ。シンプルなことかもしれないが、まずは想いを同じくしている人との繋がりを時間をかけてつくっておくことが、いつか実現したいことに挑戦をするための重要な準備になると思った。

もう一つは「体験型」であるということ。もはや、受け身のイベントで参加者の満足度を上げるのは難しい。インターネットでできないことへのニーズが必然的に高まっていて、それらを満たしているイベントになっているか?が重要だ。参加者がアクティブな状態になっているか?伝えたいことの魅力を最大限体験してもらえるように設計されているか?といったことがイベント作りにおいて大事なポイントである。

今回のイベントで秀逸だったのは、その自由度とサポート体制。参加者が企画や開発を主役となって行えるような環境を用意しつつ、分からないことやできないことについてすぐに質問できる体制が整っていたことが成功の要因となった。筆者も通常のミートアップなどにもよく参加しているが、イベント終了後にこれほどの参加者が満たされた表情をしたイベントには出合ったことがなかった。

ブロックチェーンというまだまだ未開拓な業界において、大型ハッカソンを実現させ成功させた。その背景には時間をかけて関係を紡いできたコミュニティと小田氏との関係、そして、細やかなイベント設計があった。このようなすばらしいコミュニティが存在する、日本のブロックチェーン業界の未来は明るいだろう。

Report:坪田豊
Edit:市來孝人