法制度をアップデートするロビイング支援プラットフォーム 「Pnika」が果たす役割とは

2019.08.14
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スタートアップが新たな事業領域に参入していく際に障壁となるのは、すでにある法律や規制が新しい技術やサービスの展開を妨げてしまうこと。

そもそも、生まれるニーズや生み出されるテクノロジーが予測不能な現代。市民を取り込み多様なステークホルダーで法や制度を設計する必要があるが、実際にどうしたらよいのか?その課題に一石を投じるのが、7月にサービスのβ版をローンチしたオープンプラットフォーム「Pnika(プニカ)」だ。SENQ霞ヶ関で行われたローンチイベントの模様をレポートする(トップ画像はスタッフの皆様)。

Pnika提供資料
Pnika提供資料
Pnika提供資料

「ルールを変えよう」という勇気と志を支えるサービス

新たな法制度の変更を、議員や官僚へロビイングするには時間も労力もかかる。また、言い出しっぺのメリットも少なく、誰かがやってくれたらうれしいと思ってしまうところ。「それでも声をあげてルールを変えてみよう」という勇気と志を支えたいというのがPnika代表理事の隅屋輝佳(すみや・てるか)氏だ。

Pnikaの名前の由来は、ギリシャの首都アテネの中心部の丘、プニュクスの英語名称。古代には都市国家アテネの民会会議場があり、市民による直接民主制が敷かれていた。隅屋氏は慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科で、ボトムアップによる立法プラットフォーム構築を研究している。

Pnikaの設立ビジョンは、“オープンなルールメイキングの実現によりソーシャルイノベーションが創発され、民主主義がアップデートされていくこと”と隅屋氏は強調。「Pnikaは、ソーシャルイノベーター・専門家・ガバメント関係者・市民の4者を結びつけるオープンなプラットフォーム。ルールメイキングはお金も時間もかかる一大プロジェクト。だからこそ、その政策形成のプロセスをメディアとしてオープンにし、みんなで一緒にルールを変えていけるエコシステムを作りたい」と想いを語った。

収益化に関しては現在構想中で、「既存の体制も含めた多くの人とのコラボレーションによって、どうメインストリームまで持っていくかは大きな課題だと認識している」とのこと。なお、Pnikaは現在プラットフォーム改善に向けた資金調達クラウドファンディングも実施している。
※クラウドファンディング「みんながルール作りにオープンに関われる仕組みを作りたい

自らの強みを生かして様々な形の支援が可能

Pnika「プロジェクト紹介」ページ

Pnika内では「ゴール」「課題意識」「関連する制度」「NEXT ACTION」の4点が、簡潔でわかりやすくまとめられている。現在すでに二つのプロジェクトが公開、コラボメンバーを募集している。

例えば、ローンチイベントでは、フィンランド式サウナの宮城県丸森市での運営を目指す本多智訓氏がビデオメッセージを寄せた。彼らが取り組んでいるのは、川や湖の近くにサウナ小屋を設置し、そこで温まった体を氷のはった湖や、川などに入りクールダウンするスタイルのサウナ。

昭和23年にできた全11条の公衆浴場法では、公衆浴場を事業者に運営させることやホテルや湯船とともに設置することを前提としているので、洗面所やトイレが男女それぞれに必要となり、高い防火基準を満たすことも求められる。サウナ専用施設としての運営を持続可能に、その他の地域でも展開可能にしていくためにはこの公衆浴場法をアップデートする必要があるのだ。

本多氏は、Pnikaを通じた法令のアップデートで、サウナ専用施設に対応した安全基準を確立し、サウナ小屋を河川の近くに建設することができるよう制度を整備したいと考えている。

また、支援者はこのプロジェクトに参加することで、関連法制度に関する知見の共有や、繋がるべき政策関与者の紹介、関連する他事例の提示、資金調達、広報サポートなど、あらゆる側面において自身の強みを生かした支援ができる。

ローンチイベントには一般社団法人Public Meets Innovation代表の石山アンジュ氏と経済産業省の海老原史明氏もゲストとして登壇し、「社会起業・政策起業のための『オープン』なルールメイキングとは」について語った後、来場者とのQ&Aセッションを行った。

石山氏は、これまでのロビイングを「自分たちの利益のためだけの陳情=ロビイング1.0」とすると、これからは「社会にとってこれは必要だ」と問いかけていく手法があるべきだとし、さらに「これからのルールメイキングには、官と民の壁を溶かしたフラットな横のつながり、既存の業界に限らず色々な人が政策の形成手法について議論できる場が必要だ」と語った。

海老原氏も「空飛ぶクルマ」プロジェクトの事例を示しながら、「イノベーションを牽引するのはイマジネーションである」として、「官民が混ざり、新しい設計図、アーキテクチャを使ったルール形成」が有用と語った。

イベント後、参加者・登壇者がともに撮影。

イノベーションの社会実装を促すエコシステム

制度の壁を突破したい、しかしリソースは限られている―そんな人のために、みんなで一緒にルールを変えていけるエコシステムを作りたい。そんな思いがPnikaというプラットフォームを生んだことがよく分かるイベントであった。終盤にはコアチームメンバーの紹介がなされ、弁護士、政策コンサル、エンジニア、広報まで多様な人材がFor Goodの意思で集まっている様子が見て取れた。

日本の色々なところで、素晴らしいイノベーションが生まれているのにもかかわらず、法や制度のアップデートが追いついていないという課題。これに対し、イノベーションの社会実装を促すエコシステムが達成されることは、ヘルスケアやモビリティ、環境技術など、多様なサービスの発展を下支えする。この動きは、イノベーターだけでなく社会全体をも活性化していくと感じた。

Report:深澤美奈
Edit:市來孝人