「自分らしく働き続ける魔法を授けたい」 10,000人のミレニアル女性が集う学校の仕掛け人ー SHE 福田恵里

2019.09.06
タグ:

第2期のアクセラレータープログラム開始を目前に控える「GRASSHOPPER」。当サイトでは、クリエイティブのチカラを実践しているイノベーターへの取材も行い、スタートアップとクリエイティブの関係性について探っていく。

今回は、ミレニアル世代の女性をターゲットに、Webデザインやプログラミングなどのスキルを学べるキャリア&ライフコーチングスクール「SHElikes(シーライクス)」を展開するSHE株式会社の共同創業者・取締役COO 福田恵里を取材。2018年には、スクールで学んだスキルを仕事にできる、toB向けのクリエィションパートナー「SHEcreators」を始動。10,000人以上の受講生を迎えるSHEの立ち上げの背景や、ミレニアル女性を魅了する秘訣を聞いた。

「アイデアを形にできる女性を増やしたい」転機となった米留学

ーまず、SHEの立ち上げの背景を教えてください。

福田:学生時代のサンフランシスコへの留学が転機でした。当時、ITに興味があったわけではなかったのですが、近くにシリコンバレーがありスタートアップ界隈の知り合いが増え、仲良くなった学生起業家の友人たちがアプリやWebページを作っている姿に衝撃を受けました。

帰国後、早速Webデザインスクールに通い始めました。一方、当時(2012年)の日本は、プログラミング学習自体が浸透しておらず、女性で学んでいる人はごく僅かでした。周りの女性にも「こんなサイトを作りたい」といったアイデアはあるものの、どう形にするのかの手段を知らない人が多い印象があったので、その課題を解決したいと思い最初の事業として初心者女性限定のWebデザインスクール「Design Girls」を始めました。

プログラミングと聞くと、ギークなイメージや自分とは距離があるという先入観を持っている女性が多いので、この講座は資料や環境づくりから女性用にチューニングしていきました。会場にバルーンを置いたり、休憩時間はヨガやトレンドのスイーツを振る舞って女子会をするなど、ギークなイメージを払拭しようと思いました。

講座は好評で、前職のリクルート入社後も副業として続けていました。すると、この講座がきっかけで、デザイナーやプログラマーに就職・転職する人が増え、自分が介在することで、誰かの人生がより良くなったり、人生を変えられる意義を感じたのです。その時に、共同創業の中山(SHE共同創業者/CEO・中山紗彩氏)と出会い、「人の可能性に花を咲かせたい」というビジョンが合致したので、創業に至りました。

ーその中でも「女性×キャリア」の領域にフォーカスされた理由は何ですか?

福田:いまの時代が、女性にとって追い風だと思うからです。働く女性の第一子出産後の離職率はいまだに高いです。一方社会全体ではノマドワーカーも増えていますし、リモートワークのような場所・時間に制限されずに働くなど「生き方を自由にカスタマイズできる時代」です。

仕事か家庭かの「トレードオフ」で考えるのではなく二つ欲張るという選択肢を伝え、そんな生き方を実現するスキルを提供し出産後も女性が自分らしく働き続けられる環境をつくり、大きな視点で日本の経済や女性の生き方を変えることに寄与できると思いました。

仲間との交流で感じる「心地いい焦燥感」が成長のタネになる

ー近年、オンラインサロンのような遠隔学習も多くある中で、SHEがリアルな場を大事にし続ける理由は何ですか。

福田:SHEでは、スキルはもちろん、この場所に通ったり新しい仲間と出会うことで、「新しいマインドセットを装着する」ことを大事にしています。

オンラインの場合、参加や成長は自分の自制心に依存する部分が大きいですが、リアルスクールの場合、この場に来ることによって同期の成長もリアルにわかるので、いい意味で焦燥感を感じてもらえます。

またSHEでは、月1回のグループコーチングを実施しています。4〜5人の少人数で、自分で立てた目標がどれくらい達成できたかや次の目標について共有します。1on1ではなく、あえてグループで行うことで、ちょっとしたライバル意識を醸成したり鼓舞しあえる場をつくっています。

ーすでに10,000人以上の卒業生を輩出されているSHEですが、コミュニティづくりで意識していることはありますか?

福田:目指しているのは「Giveしあえる球体型のコミュニティ」の形です。一方的に自分がメリットを享受するだけでは、コミュニティの熱量は上がりません。自分がこのコミュニティに必要とされている、役に立てているといった「自己貢献感」こそが、コミュニティの熱量を左右します。

最近だと、初期の卒業生が独立後に、現在SHEで講師をやっていたり、生徒さん同士で、自主的に勉強会を企画してくれたりしています。そういった、自分の学びを次の世代や周りの人に還元していくなどの仕組みを取り入れることで、コミュニティをより強固にしていきたいです。

ー講師も、受講生と同世代の方が多い印象でした。講師の選び方にもこだわりはありますか?

福田:SHEはミレニアル女性をターゲットにしているので、講師の方も受講生と同世代または少し年上くらいの方にすることで、「自分も3〜4年勉強したら、この人みたいになれるかも」という身近な目標になれる方をお呼びしています。自分がスクールに通っていた時の実体験として、プログラミングの先生からは、スキルは学べたとしても自分の将来像を重ねられないことが多かったんです。また、ベテランすぎると、手が届かず諦めてしまう部分が多いですが、同世代の人が活躍している姿を見ると、ちょっとしたライバル意識が生まれたりモチベーションアップに繋がると考えています。

必要なのは「夢」より「一番幸せな瞬間」を見つけること

ー新しい企画や事業アイデアを考える時のマイルールはありますか?

福田:SHEでは、定期的に場所を変えてブレストすることを大事にしています。たとえば先日も、新拠点の内装を考えるために社員全員でAirbnbの素敵な家を借りて、合宿形式で打ち合わせをしました。いつもと違う場所でブレストをすると思考の幅が飛躍的に広がり、固定概念や常識を飛び越えて考えられるようになる気がします。

ー日頃から大事にしているインプットの手段やコツはありますか?

福田:実際に身を以て体験して感じる方が自分ごと化できるという実感があります。SHEを運営する上でも、渡米し、海外の女性向けのコワーキングスペースを自分の足で見て回りました。

またSHEでは、場ありきのリアルな体験を提供しているので、「チームラボボーダレス」や「リアル謎解きゲーム」といった、他業界で話題のリアル体験ができる場にも足を運ぶようにしています。みんなで集中するための工夫やその世界に入り込むための仕掛けがたくさんあり、学びが多いです。

ー「やりたいを発見し、夢を形にする」を体現されている福田さん。そのために必要なスキルやマインドセットは何だと思われますか?

福田:SHEにも「やりたいことがわからない」という方が多くいらっしゃるのですが、私は「わかりやすい”やりたいこと”は見つからなくてもいい」と思っています。”やりたいこと”というと、つい「起業」や「世界一周」など、わかりやすくて人に言いやすいものを想像してしまいますが、そんな大それたものである必要はないんです。「周りの人に喜んでもらうこと」や「誰かの成長の後押しをすること」も立派なやりたいことだと私は思います。だから、「やりたいことを探すこと」に固執したり、見つからないことに嘆くのではなく、まず「何をしている時が自分にとって一番幸せか」を考えてみてほしいです。そうすることで今後の目標もクリアになると思います。

ー今後のSHEや福田さんご自身の目標・展望を教えてください。

福田:いまは、女性のキャリアにフォーカスしていますが、ゆくゆくは、さまざまな人生のライフイベントに沿った課題解決をしていきたいと思います。

SHEのビジョンである「一人一人が自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を作る」ことは、性差や年齢に関係なく多くの人に当てはめられる価値観です。結婚・出産・子育て・老後など、それぞれの課題を解決するサービスを提供し、より多くの人に「SHEの世界観やブランドなら間違いない」と選んでもらえるような存在になりたいです。

Interview & Text:長谷川きなみ
Edit:市來孝人