カヤックは古都・鎌倉でどんな挑戦をしているのか?前例なき仕掛けを続ける柳澤大輔に聞く

2019.10.18

「面白法人」として事業や組織にユニークな仕掛けを続けるカヤックの代表を務める柳澤大輔氏。「鎌倉資本主義」というメッセージのもと、鎌倉という古都に「まちづくり」の価値を追加する姿勢は、自治体の魅力を見える化させる。柳澤氏に自治体をプラットフォームとしてコトを仕掛ける魅力、ネットと「まちづくり」のクリエイティブの違いなど多面的にうかがった。

ーまず、柳澤さんから見る“挑戦するプラットフォームとしての鎌倉”の魅力を教えてください。

柳澤:私自身は17年前に拠点を鎌倉に移したのですが、まず、「住む」という観点から見ると鎌倉のような自然があり都市的な面もあり文化もあるコンパクトシティはとても魅力的です。世界的に見ても人気の居住エリアには、海がある・山があることだけではなく都会的要素があります。また、人の入れ替わりもないと面白くないので観光的な要素も必要で、そして文化的な要素もあると街に深みが増します。「住む」という観点からはもともと鎌倉はその要素が揃っていたのです。

一方、鎌倉は観光エリアなので年間2,000万人が訪れるとともに富裕層が住んでいるため観光と税収で成り立っていました。ですが、観光や固定資産税に加えた税収の新たな柱を作るために「働く人を増やそう」というのが市のマニフェストとしても出され、テレワークを推進するなど、ワーカーを誘致し、「住む」に加えて「働く」魅力を打ち出しているのが今の鎌倉です。

また、カヤックが「SMOUT(スマウト:カヤックの提供する移住サービス)」を展開している関係で他自治体の方と話をする機会が多いので感じるのですが、日本全国の約1,800自治体の中でも鎌倉はオープンな方です。地政学的に東京にも近いので東京からの情報も入って来やすいですし。

さて、そのような鎌倉の「住む」「働く」観点の魅力をカヤックなりに発信していこうということで、「鎌倉資本主義」という考え方をオンラインや書籍などでも発信しています。そして、考え方だけではなく鎌倉で実験したことをビジネスにつなげていくための地域通貨、コンテンツとしての「まちの社員食堂」(社員食堂を地域で働く方に開放している取り組み)などを進めています。

我々は鎌倉を舞台に進めていますが、中には鎌倉でしかできないことももちろんありますし、他の地域でも再現性あるものもあるので鎌倉での実験を発信し続け、鎌倉のためにもそして他自治体の方にも活用可能なところを見ていただこうとしています。

ー元々はネット系コンテンツでクリエイティブなものを作るイメージが強かったカヤックですが、最近では自治体を巻き込んだクリエイティブな仕掛けを多く目にするのは積極的な「鎌倉資本主義」をベースにした情報発信があるからなのですね。

柳澤:我々は面白法人として無形のものに面白みを持たせるということについては長年取り組んできているノウハウがあるので、それを今「まちづくり」という形で鎌倉に還元し、他の自治体にも横展開したいと考えています。

ー面白法人として、今までネットの世界で提供していたクリエイティブと「まちづくり」のクリエイティブは何が違うのでしょうか?

柳澤:まず、時間軸が違います。そして失敗の許容度。ネット系事業は改善プロセスも含まれるのである程度のトライアンドエラーが許されますが「まちづくり」の根幹に関わるものは失敗が許されない。

ただ、ネット系で培った発信力は「まちづくり」に活かせますし、まちの個性を生かして他にはないものをつくるという視点もまちの価値を高めていると考えます。

ー他の地域で横展開できるものもあるのでしょうか?

柳澤:「カマコン」という毎月開催している会議体や、カヤックの得意とする「ブレインストーミング」などは、地域のみんなが仲良くなって、新しいものが受け入れやすく、生み出しやすくなるための下地を作るために使える手段で、これらは横展開できると思います。

「カマコン」はすでに5年ほど続けていて、毎月100人ほどが集まります。毎回参加しなくても良いのでふらっといつでも参加できるのですが、自分たちの地域の好きなところを発見するのに最適な場所になります。

ー「カマコン」はスタートアップやベンチャーなどが発表するような場所でもあるのですか?

柳澤:かつて「カマコンバレー」と言っていたのですが、現在では「カマコン」と呼び名を変えています。やはりスタートアップ的な一気に投資を集めて急成長を見込むシリコンバレースタイルは東京の方が強いので、鎌倉ではもっと地元の魅力を掘り下げることに重点を置いています。

ただ、鎌倉で起業したいベンチャーは増えていますし、それは「カマコン」で生まれることもあります。起業支援に関しては今後さらにチカラを入れていく予定です。先日、神奈川県と一緒に鎌倉で起業家を育てる場づくりの発表もしました。
参考:起業を目指して「いざ鎌倉!」~起業の支援拠点を鎌倉に設置します~

ー話は少し鎌倉から離れますが、カヤックがアカツキと共同で手がける「うんこミュージアム」はインスタ映えを意識したコンテンツですが、サービス×体験×不動産の掛け算はこれからも手がけていくのでしょうか?ニューヨークのスタートアップ「Figure8」がインスタ映えを意識した美術館「Museum of Ice Cream」で40億円以上を調達しましたが、近しいものを「うんこミュージアム」にも感じています。

柳澤:「うんこミュージアム」を始め「面白いことを作ってほしい」というクライアントワークを請け負っているチームの特徴の一つに「若い社員がいること」があります。「うんこミュージアム」もカラフルなインスタ映えを意識した作りになったのも若い世代がクリエイティブを担っているからです。若く、最先端の技術を使えるクリエイターの存在はまちづくりにも生かしていけると思っています。

ー「まちづくり」の観点で注目しているテクノロジーはありますか?

柳澤:地域通貨を作っているので、仮想通貨の技術には興味あります。あとは移動手段や移動シェア。アクセスのしやすさが都市の魅力につながる事例として新幹線や道路の発展がありますが、ドローンで移動や物流も担えるようになるとまた変わりますよね。 あとは移動のシェアなどもありますね。あとは移住のプラットフォームの発展系も。

「まちづくり」に関するテクノロジーのフェアなども今後検討しても面白そうですよね。「まちづくり」とまで行かなくても自分のまちが好きになるテクノロジーでも良いかもしれません。

ー最後に、鎌倉で起業に興味ある方にメッセージをいただけますか?

柳澤:まず鎌倉だけではなく地方全般で話をすると、ステークホルダーとの距離が近く行動・実現できる幅が大きいです。100万人の街では出来なくても1,000人の町で全体を動かすことができるのがやりがいあると思います。
鎌倉を中心に話をすると、鎌倉で起業する良さがは「仲良く応援」する仲間が多いことです。「カマコン」の今までの流れを見ていてもそうですが、様々な角度から応援してもらえると思いますし、僕自身はいろんな起業家が来て面白くなればいいなと思っています。

Interview:西村真里子、土屋卓也
Text:西村真里子
Edit:市來孝人