電通が“クリエーティブ”の力でスタートアップを後押し「GRASSHOPPER」第2期 採択企業ピッチレポート

2019.12.27

2019年11月29日(金)電通ホールにて開催された、アクセラレーションプログラム「GRASSHOPPER」第2期のデモデイイベント「GRASSHOPPER DAY 2019 WINTER」。

「GRASSHOPPER」とは、電通と、多彩な分野から集ったメンター陣が、スタートアップをクリエーティブ面から支援するアクセラレーションプログラムだ。

3ヶ月にわたるプログラムでは、メンターによる毎週の講義・アドバイスに加え、電通の社員がスタートアップ企業の担当プロデューサーとなり、大企業との協業・共創による新たな事業展開・開発の可能性を探ったり、電通の投資部門が独自の視点で投資を行ったりという仕組みも取り入れ支援を行ってきた。

第二期採択企業9社によるピッチコンテストを開催

この日のデモデイ内ではピッチコンテストやトークセッションを開催。ピッチコンテストには、第2期採択企業全9社が出場した。採択企業はAMATELUS、MI-6、ookami、OLTA、GINKAN、CROWDPORT、CODE Meee、SIRUTASU、WFrontier(日本語表記五十音順)の9社。

審査員は、田中広記氏(スクラムベンチャーズ)、 深山和彦氏(グローバル・ブレイン)、村田祐介氏(インキュベイトファンド)、山中卓氏(i-nest capital)(氏名五十音順)、前田浩希(電通)、笹本康太郎(電通ベンチャーズ)、松尾秀実(電通)が務めた。

トークセッションは「メンターに聞く、GRASSHOPPER2期生の魅力・メンタリングの極意」「スタートアップ×クリエーティブ〜クリエーターの存在が成長を加速させる〜」「大企業とスタートアップのシナジーは存在するか?」の3テーマ。

3つめのトークセッションは「NewsPicks Studiosコラボレーション」として、NewsPicks Studios CEO 佐々木紀彦氏がモデレート。明石ガクト氏(ワンメディア)、佐藤裕介氏(ヘイ)、柴田陽氏(連続起業家)、中村洋基氏(PARTY)、村田祐介氏(インキュベイトファンド)とのトークを繰り広げた。

当記事では、デモデイ内でのピッチ内容をダイジェストでお届け。ピッチコンテストの入賞結果は以下の通り。
1位:CROWDPORT
2位:MI-6
3位:OLTA
※MI-6は、「Island Innovation Demo Day 2020」への出場権が授与される「engawa KYOTO賞」も獲得

1位:CROWDPORT

日本初、貸付ファンドのオンラインマーケット 「Funds」を運営。藤田雄一郎氏は、社債がアメリカではメジャーな調達方法でありながら日本ではほぼ普及していない点にまず言及。「個人向け社債を代替するようなサービスが必要」と考え、「Funds」で、株式投資と債権の「その間にある巨大な空白地帯を埋めたい」と語る。

ユーザーのメリットは「3%前後の固定利回り」「1円から投資が可能」「相場がないのでほったらかしでOK」という点。気になるファンドを選択し、ファンドの運営企業、資金使途やリスクを写真やイラストを交えながら確認しながら投資することができる。

また、「製品やサービスに共感を抱いたファン的な個人株主」つまり「ファン株主」需要がある点にも言及。しかし株には相場があるため、株価が下がることで「アンチ化したり資本コストが高いなど「株式がファン作りに最適な仕組みかどうかは疑問が残ります」と藤田氏。

「Funds」は相場がなく安定的、株式ではないので希薄化の問題も生じない、コストも割安、手続きも簡単という点からそれを代替できる。「GRASSHOPPER」のメンタリングを通して、「ファイナンスとファンマーケを組み合わせた新しいモデル」としてこの需要を「FInCommunity(フィンコミュニティ)と名付けた。

「Funds」での個人投資家の登録は11ヶ月で15,000名を達成。「誰もが当たり前に利用する国民的な資産運用サービスにしていきたい」と語った。

2位:MI-6

まず、素材産業は日本の輸出でも大きな割合だが、研究開発のプロセスが何十年も革新がない点に触れた木嵜基博氏。「実験計画の大半が経験と勘に依存していると言われている」「エイヤで決めている」という。

これを解消していくのがMaterials Informatics(MI)。データサイエンスを活用し、欲しい性能の新素材を「狙い撃ち」して開発する技術・手法だ。MI-6は深層学習・独自解析アルゴリズム・物性シミュレーションをかけ合わせた世界初の新物質探索アルゴリズムを通してMIに取り組んでいる。

素材産業の研究プロセスは、課題設定・実験設計・実験実施(設計と実施は繰り返し)。これらを全て人でやってきたところを、MIによる人はクリエーティブ、イノベーティブなもの(課題設定など)にフォーカスできる。

ピッチでは、10年以上かけて研究していた素材に関して、たった数ヶ月で過去のベスト値を超える素材を発見したというクライアントの事例も紹介。

来春には「研究開発のエイヤをなくす」AIによる材料開発支援SaaaS「 MI-SaaS」が正式リリース予定。いわば「研究開発版セールスフォース」だという。

さらにデータサイエンスとロボティクス技術を融合することで、AIに基づいた材料探索の完全な自動化を目指し「AWSのような形で提供していきたい」とした。

3位:OLTA

澤岻優紀氏は中小企業の資金繰りといえば銀行融資、しかし収益構造は悪化傾向で、中小企業の資金調達オプションは減っている点を紹介。そこで「クラウドファクタリング」というアプローチに取り組むのがOLTAだ。

「納品後入金待ちの請求書を弊社に(中小企業が)売却し、現金化することをオンラインで完結」させるもので、「はやい(24時間で請求書を現金化)」「かんたん(全てオンライン完結)」「リーズナブル(業界最低水準)」という点が強みであるとした。

今後はクラウドファクタリングの認知獲得を目指すべく、会計ソフト「freee」や、地域金融機関などとの連携を強化。また、OLTAと銀行が協力しクラウドファクタリングで運転資金を提供、成長した企業を融資先候補へ、という戦略にも力を入れているという。

また、「GRASSHOPPER」を通して全国各地の地域新聞社やメディアとの連動に向けて協議中。メンタリングで整理された「すべての企業をキャッシュヘルシーに」という言葉を紹介し、企業の処方箋的な存在でありたいとした。

以下、日本語表記五十音順でピッチ内容をご紹介。

AMATELUS

スワイプすると自由に視点を切り替えられるNew xR(新型動画)「SwipeVideo」を開発。

現在マスメディアで見られる自由視点映像は「ただ回っている映像を見ているだけ」「任意で視点の切り替えができない」という点が課題であると下城伸也氏。

画質とカメラ台数の制限、視聴デバイスの制限、ネットワーク負荷など「たくさんのハードルが存在している」自由視点映像。そんな中「SwipeVideo」は「4G以上で配信可能、スマホでも撮れる本格パレットタイム、カメラ台数無制限、スワイプで視点切り替え、アプリ不要のWeb視聴可能」という、低価格・手軽・高速通信で展開。その理由は、スワイプに応じてカメラ一台分の映像だけをクラウドから個別配信する配信システム(国際特許取得)にある。

高校の教材、企業のマニュアル、自治体での伝統芸能の継承など、特許取得前は技術教育分野に特化し展開。特許取得後はスポーツやエンタメに参入し、TリーグやFNS歌謡祭での展開も。

また「GRASSHOPPER」のメンタリングを通して「これまでに放映権者だけがもっていたスイッチングの権利を誰もが手に入れることができる」「Switching Free」であることを強みとして再定義。スポーツやエンタメ分野での新規案件も進行中だ。

ookami

「スポーツビジネスの基準を変えよう」「スタジアム、テレビに次ぐ、第3のスポーツエンターテイメントを」という思いの元、アプリ「Player!」を展開。これは「盛り上がっている瞬間だけ教えてあげますよというコンセプト」「スポーツは見逃せない瞬間があるので、その瞬間を(ユーザーに)教えてあげて、その瞬間を共有できるようなコミュニティを作っています」と尾形太陽氏。

強みは「未開拓なマイナー」競技へのリーチ。例えばハンドボールの高校選抜など、様々な競技の年間16,000試合のリアルタイムデータを配信。現地で観戦している人からの情報により「番記者の民主化」を目指し、アマチュアや大学、アンダー世代など「日本中で眠っていた」試合の感動を可視化するとした。

また、SNS更新、ホームページ更新、OB・OGへの連絡など、多岐にわたる大学の体育会の広報活動の労力を下げる管理ツールも開発・配布。

メジャースポーツだけではない「テレビではビジネス化できなかったロングテールなところ」での「21世紀型の広告の開発」も視野に入れている。

GINKAN

「お店探しに、正義を」「本当に美味しいお店をあぶり出す」(神谷知愛氏)べく「SynchroLife」を運営。

これまでグルメレビュアーには報酬がないため評価の偏りが生まれていた点に着目。価値のあるレビューに報酬を生み出すべく、独自の暗号通貨を発行。世界初・食レビューに報酬制度を付与した。

「SynchroLife」は4言語・155カ国対応。47カ国での口コミ投稿があるといい、飲食店は月額・初期投資0円のリスクゼロで集客、食事代金の5%のみを払う完全成功報酬型。ユーザーは食事代金から1〜5%が暗号通貨として還元されるが、今後は暗号通貨をギフト券、食事券への交換、QR・プリペイトカード決済へと変換できるようにしていくという。

「GRASSHOPPER」のメンタリングを通して、タグラインの開発と、日英のアプリ紹介動画制作が完了。今後SNSマーケティングやグロースハック戦略に関して準備が進んでいる。

CODE Meee

「香りとITで新しいライフスタイルをつくる」と太田賢司氏。解決したい課題は、誰もが抱えているストレスと、そのストレス解消をタバコ、お酒、睡眠薬といったところに依存してしまう社会課題。「これらの状況を健康的なアロマの効果で代替する」ことを目指している。そして単なるアロマではなく、一人一人のストレス課題に対応した香りをテクノロジーを駆使して配合し定期的に届けるというもので、ターゲットもビジネスパーソンだ。

SNSとAIを連動させて最適な香りを配合するという点が特徴。ユーザーはプロフィールを登録するとともに今抱えているストレス課題、香りを嗅ぐことでどういう気分になりたいか、好みの香りといった点を選択。さらにSNSと連携し自分の投稿データを解析し精神状態をグラフ化、それによって香りを生成。これらを元に処方箋が届き、気に入ったものは定期購買が可能。

利用シーンとしては「大事なプレゼン前」「デスクでの一息」「眠りに入る前に」を挙げた太田氏。強みは感覚的であった「香り」に「データ」を持ち込んだところと表現。商業施設や企業の会議室の香りをデザインする取り組みも行っている。アーティストのライブでのフレグランスグッズとしての展開なども。

「GRASSHOPPER」のメンタリングでは「コンディション」を香りで最大化するというこのモデルを「ソリューション・フレグランス」と定義。また、さらに科学的なエビデンスを強めるべく電通サイエンスジャムとの連携や、アイドル・アニメなどの分野で、体験をデザインしていくべく電通のコンテンツビジネスセンターとの連携も進行中だ。

SIRUTASU

まず、「成功したかどうかは死ぬ直前までわからない」「行動変容を(ユーザーに)求める」ことから、ヘルスケアは世界の大企業でさえ成功していないチャレンジングな領域であることに言及した小原一樹氏。

「買い物をするだけで、栄養データが貯まるサービス」である「SIRU +」を使うと、買い物の履歴を自動で同期し分析。目指したい健康の状態、家族構成や、普段使っているポイント・クレジットカードを登録。これにより買い物したものが自動的に栄養素へと可視化される。アプリをユーザーに無料で提供しつつ、流通にはデータ分析のSaaSを提供。分析の「いつ誰がどこで何を買って、どんな栄養乗艇で、どんな食生活をしているのか」このデータをベースに、流通やメーカーにとっても商品のリコメンドや店頭施策へ繋げられる。

「栄養は、データとして取得が難しいのでデータとしての価値が高い。買い物を栄養素に変換することで、他の企業が持ち得ないデータを持っている」という点が強み。「GRASSHOPPER」のメンタリングを通して「LIFE HEALTH CARE」「あなたのライフに、つづけられるヘルスケアを」と、「SIRU +」を通したライフスタイルを再定義した。

WFrontier

海外も含め「生鮮のEコマース率は店舗からネットに流れている」と八木橋裕氏。しかし日本では「超高齢化社会へ」「ドライバー不足」「中小の小売企業はシステム投資が難しい」「お客様目線では、忙しい人が使いたいはずなのに当日頼めない」などといった様々な課題が。

買い物代行プラットフォーム「Twidy」は「日本のネットスーパーが抱える課題を
地域密着型で解決するサービス」。リクエスタ(依頼者)から注文が入ると、ピッキングサポーターとデリバリーサポーターにオーダーへ。サービスのポイントはまず「スピード」。「午後から頼んで夕食に間に合うのはTwidyだけ」と表現した。

サービスについては経済地理学からのアプローチとして「近所にスーパーがない場所」を選定。昨年から渋谷、今年9月末からは三田と深沢でスタート、12月からは中野で開始。三田では渋谷での10倍以上のスピードで登録数が拡大したという。

電気・水道・ガス、そして「Twidy」という生活インフラを目指すとし、「GRASSHOPPER」を通して、協業する企業へのアプローチも実施。

今後も継続的に採択企業を支援

三ヶ月のメンタリングを経て行われた今回のピッチコンテスト。「GRASSHOPPER」では、この三ヶ月で生まれた施策や協業などの実現に向け、今後も継続的に採択企業をサポートしていく。